健さんの
プラモコラム

その88 HGUC ズゴックEの巻

(1/144 HGUC ズゴックE / バンダイ/ MSM−07E ズゴックE
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場)


 水中特集もこれでラスト。夏も終わっていくんだなぁー、なんて、しみじみ思う今日この頃です。来年の夏には、残りの水中MSも出揃ってくれると良いですね。いや、ボクが勝手にそんなムードになってるだけで、別にバンダイさんは「夏は水物特集だ!」なんて、一言も言ってないんですが。今思えば、この夏の流れは、「出来の良いキットを敢えてリファインするキャンペーン」でも有ったような気がします。(寒冷地GMは、そっくりさんがいますし。)つまり「比べてください特集」かな。てな訳でズゴックEも、旧キットを片手に、見ていきましょう。



 頭部です。旧キットではモノアイをクリアーパーツで再現、モノアイシールドは前側の部分だけ黒で成形するという構成でした。今回はHGUCズゴック同様に、モノアイシールド全周を黒で成形、その上に頭頂部パーツを被せます。頭部の魚雷発射管はボディと同色なので、HGUCズゴックの時の様なパーツ分けは有りません。モノアイシールドは、実は支柱の部分に切り欠きが有って、厚く成形された支柱が半没する構成。支柱が厚い分、折れにくくて、低年齢ユーザーに親切な設計ですね。(モノアイの有る、正面の支柱だけは薄い成形です。逆に、ここと比べると、他の支柱の頑丈さが実感出来ます。)

 モノアイシールドの正面が尖った、V字型の顔つきは、好みの分かれる所かも知れません。設定でも、カトキさんの画稿でも、ここまでは尖っていないんですけど。頭頂部が上から成形されてるHGUCよりも、前後分割の旧キットの方が設定に近い印象というのが、不思議な様な、面白い様な。HGUCズゴックがV字顔だったので、それに合わせてあるのかな?ただ、鼻の下が長い馬ヅラのE型を、こんな目つきにアレンジしたためか、ボクにはモビルアーマー顔に見えました。(特に上から見ると。)

 馬ヅラと言えば、カトキさんの画稿と設定画の相違点の一つに、ボディ先端(折れ線上)の、4つの六角形の配置が挙げられると思います。(パッケージイラストが設定画に近いので参考になるかな?)丸ダクトと六角形の位置が、設定よりも離れてます。サイズも小さくなってるかな。この辺が顔の面積を広く見せているのかも。ハッチ上の凹みも、設定ではもっと幅が広い気がします。オチョボ口が、ますます顔を大きく見せてるのかなー。

 ボディです。・・・まぁ、頭との境目は無い訳ですが(笑)。ハッチは別パーツで、色分けされました。ノーマルズゴックのハッチよりも、ずいぶん大きいですね。ほっぺた(!)と胸のダクトは一体で、ボディ内側から仕込みます。ほっぺたの丸ダクトは、ボディ表面の傾斜になじませて欲しかった所です。まるでプラモの様に(笑)、「成形方向にそのまま埋設しました」みたいな、固い表現が残念です。HGUCズゴックでも、不自然さは無かったと思うので、出来ない事は無いと思うんですが。

蒸着!

ウエストは上下に大きく可動します。ディオラマ製作を考えてる人は、この可動を活かせるポーズで作ってやると、少ない作業量で躍動感が出せるかも。

 ウエストです。旧キットでは、ボディをウエストの下で分割して、左右回転だけ行える仕組みでしたが、今回はウエストの上側で分割し、ボールジョイントで自由可動します。ただし実際は、左右回転は干渉のために苦手で、上下方向のみに良く動きます。形状的にもウエストがもっと丸くなっていれば、よりブチメカ(出渕さんデザインのメカ)らしかったと思うんですが、それとは別に、ウエスト下で回転出来れば、ものすごく良く動いたんじゃないですかね?

 は、フンドシ形のフレームを前・後・下から囲うパーツ分割で、股下のスラスターもクッキリ再現。丸いスラスターは、前部の四角いスラスター(の、内部メカも)を圧迫してる気がするので、もう少し後ろが良かったかも。スカートは、画稿のフンドシとの位置関係を見ると、前側をもう少し短めにしても良かったかも。プロポーションもスリムにアレンジされた事ですし、さらに軽快な印象になったかも。

 は、スネのジャバラ一節ずつ別パーツ化して、リアルに再現。今回最大の見せ場ですね。お腕型の節を重ねてる構成なんですが、HGUCズゴックの様に節ごとに可動する訳でもなく、ヒネりもヒザ部分で行ってますから、節同士がしっかり固定される、ハメ込み構造になってても良かったかも。

 ところでこのジャバラ、「ポケ戦」発表当時は凝った形状でリアルに見えたんですが、MGズゴックの解説に「流体センサー」なんて物が登場してからは、「単純な筒形状の方が、水流を乱さなくて良いかな?」なんて発想も出来そうです。ズゴックEがMG化されたら、流体センサーは付くんですかね?ボクは、「初期のズゴックで姿勢制御のデータが十分に得られたので、ジャバラからはセンサーが外され、関節保護と伸縮機構に特化させる事が出来た」なんて解釈でも良いと思ってます。

 スネです。ヒザの後ろにはスキが無く、ヒザの前は、曲げた時に関節パーツがスキマを塞ぐ設計で、スカスカ感が有りません。それでいて旧キットよりも良く曲がる、充実したヒザですね。ヒザアーマーはカトキさんの指摘も有って、角ばらない様に造形してあります。スネ前面には凸モールドのラインが通っていますが、ここはスジ彫りでも良かったのかな?設定では凹みの奥にスジが通ってる様にも見えますが、良く分からない部分です。

 足首は、旧キットよりも、ずいぶん小さくなりました。HGUCズゴックと並べても違和感の無いサイズです。足裏パターンは、旧キットでは肉抜きで表現してましたが、今回はちゃんと肉が詰まって、パターンも正確になりました。カカトのパターンはちょっと違う印象ですが、設定画では、立ちポーズと航行形態でカカトの大きさが異なる様なので、立ちポーズを優先するとこうなった、という所でしょうか。足裏バーニアはグリグリ可動します。


左から、旧1/144ズゴックE、HGUCズゴックE、HGUCシャア専用ズゴック。新旧の違いよりも、通常型とE型の違いに驚きます。ディテールどころか、プロポーションがこんなに違うとは!

 足首カバーは、スネにハサミ込む構成で可動式。旧キットでは可動せず、足の甲に貼り付けてあるだけ(!)だったんですね。カバーの取付け部の表現は旧キットにも有りましたが、航行形態で丁度良い位置に来るようになっていて、立ちポーズでは見えませんでした。今回は可動式のため、立ちポーズでも見える位置になります。足の甲とツマ先の関係も改善されていて、旧キットよりも、つながりが自然になっています。

 肩アーマーは、前後分割に、上面の丸パーツ(センサーか、ソナーかな?)を貼り付ける構成。ボディから出ている肩関節のピンを、挟み込んで組み立てるため、残念ながら後ハメ不可になっています。パーツを切り欠けば後ハメも可能ですが、なんだか目立ちそうです。ピンがボディフレームと別になっていて、後から差し込める様になっていれば良かったかも。肩の前と後ろでスラスターの数が違いますから、後ハメ加工しない人は、特に注意して組立てましょう。

 それから、肩アーマーの位置や形状が、ガンダム等の人型MSと変わらない印象です。もう少しなで肩の方が、水中用っぽい感じが出ると思うんですけど、どうでしょう?まさかHGUCゾゴックと並べて違和感が無いようにという配慮だったりとか・・・(ああいうのこそ、アップデートして欲しいなぁ。)


HGUCズゴックE(上)と、ボクなりのイメージ(下)の略図です。肩をなで肩に、モノアイシールドを丸みのあるラインで。ハッチ上の凹みの幅を広く、六角のディテールを大きくしてみました。

 は、発売前には「上腕の伸縮機構を再現」とか聞いていたんですが、中止になったのか、何かの間違いだったのか、説明書で触れられてないだけなのか、良く分からない所です。上腕内部は、筒パーツで連結したフレーム構造なので、確かにハメ込み深さで長さを調節出来そうですが、延ばそうとすると筒パーツよりも先に、肩やヒジのボールジョイントが抜けそうで、あまり確実な物ではなさそうです。それに縮む方向には、なかなか動いてくれませんし。モモと同様、ジャバラのリアルさだけでも十分納得出来るので、良いと思いますけどね。

 前腕は2分割ですが、旧キットとは分割方向が変わりました。ヒジアーマーを分割しない、MGズゴックと同じ方向。ちょっと意外でしたが、HGUCズゴックはヒジアーマーの真ん中で分割してるんですね。E型の場合、特にヒジアーマーが長いので、分割方向は重要ですよね。旧キットではハメ込みピンが丸見えでしたが、今回は裏までスッキリしてます。ヒジ関節部のリングが別パーツなのも嬉しいですね。

 ツメは旧キットよりも短く、太くなりました。設定でもこの位ですね。ツメの内側には肉抜きが有るので、埋めてやりましょう。基部はボールジョイントで、軸可動だった旧キットよりも表情豊かに動きます。手のひら(?)のビームキャノンは、旧キットよりもクッキリした形状になりました。ツメのスキマから見える内部も詰まった印象で、この辺も旧キットより実感が高まってますね。



 背中は、インテーク(たぶん)と、スラスターが別パーツ。どちらもボディの組立て前に取り付けておきますが、インテークはボディ組立て後にハメ込む事も可能です。今回は、スラスターとかダクトとか、内側から仕込む組立てが多いんですが、完成後に、うっかり押し込んで外れない様、裏側を別のパーツが押さえる構造にしてあります。モノアイだけは、うっかり押すと引っ込んでしまうので、注意しましょう。(完成すれば支柱に隠れるんですが、途中まで作って投げ出す人とかね。あ、ボクか。)

 着脱式のジェットパックは、HGUCハイゴッグと共通の形状になっています。センサー(サーチライト?)や、背中とのジョイント部は共通ではありませんが、実機でもそうなってるので、念のため。背中への取付け方法は、旧キットではロックの付いたツメでしたが、今回は板とスリットに変更されています。破損しにくくて良いですね。

 足を閉じると、巡航形態になります。今回は土踏まずの部分が可動して閉じる仕組みになっていますが、設定ではツマ先とカカトの、グレーの部分だけを閉じている様です。つまり、旧キットの方が、仕組みとしては設定に忠実みたいですね。でも、ここをアレンジした事で足の甲とツマ先のラインが自然に繋がったと思うので、適切な判断だったと思います。



 組立時間は、1時間10分でした。顔つきの好みは有ると思いますが、全身のバランスは、ずいぶんカッコ良くなったと思います。関節にABSのボールジョイントを多用しているので関節保持力を心配してたんですが、HGUCズゴックよりも、格段に保持力が上がってます。肩はあと一歩ですが、股関節はポリキャップに負けてない気がしますね。これでウエストが回転出来たら、すごく遊べそうなのになぁ。(上級者は、ぜひ改造を!)



おまけ

 せっかくなので、旧キットの事も少々。HGUC用のカトキさんの指摘は、「旧キットのここを調整したい」と言う内容が多かった様に思います。それだけ完成度が高かったという事ですね。カトキさんの指摘を参考にして、旧キットをイジってみるのも、楽しいんじゃないでしょうか。プロポーションは今風じゃありませんが、人間離れしたプロポーションがウリのMSですから、あまり気になりません。新旧と言うよりも、2通りのアイテムで2通りの味わいが楽しめる様になったという感じでしょうか。



 特に、頭部の重厚さは魅力です。HGUCでは、ボディ自体が小さくもなっていますが、前後の比率が変わっている様です。旧キットでは接着ラインの前と後ろのボリュームが、ほぼ同じですが、HGUCの背中は平たくなって、前半分ほどのボリュームは有りませんね。腕の取付け位置が、ボディの接着ラインよりも若干後ろ寄りのため、肩を反らせた様な威圧感も出ています。設定でも、腕はこの様な配置です。


HGUC(左)と旧キット(右)の、ボディの比較。頭部横のモノアイシールドの支柱(接着ライン上)から前と、後ろの比率にご注目。背中が比較的平らな、人間っぽいスタイルに思えます。後ろ半分のモノアイシールドが小さい分、余計に顔が大きく見えているのかも。
旧キットの腕の取り付け位置は、接着ラインよりも後ろ寄りなんですが、写真後方(左肩)を見て頂けると、分かりやすいでしょうか。

 モノアイシールドは顔面から一段引っ込んでいて、当時は不自然な設計だと思ったんですが、HGUCと並べると、こっちの方がズゴックらしい表情で意外でした。(カトキさんの画稿も奥目に見えますね。)あと、狙って設計してるのかどうか分かりませんが、キットの上から見下ろすとモノアイがヒサシに隠れて、吊目とか、光ってない様にも見えるんですね。あくまで擬似的な表情変化なので、HGUCには適さないかも知れませんが、面白い効果です。


HGUC(左)と旧キット(右)の、モノアイの比較。旧キットのモノアイは、この角度からでは見えず、奥目である事が分かると思います。再現方法は異なりますが、HGUCズゴックでも、かなり奥目になっています。奥目でない方が視界は広いと思うのですが、やや凄みに欠ける印象です。

 最近では、価格が安いHGUC以前のキットを、SEEDのコレクションシリーズみたいに考えても良いかな?なんて思い始めています。可動の楽しみはHGUCに任せて、いっそ固定ポーズで作ってみるかな?なんてね。コイツは特に、そんな気持ちが湧いてきますね。


2003.9.10 健 竹史

HGUC ズゴックE
HGUC ハイゴッグ
HGUC ジム寒冷地仕様

1/200 スペースシャトル オービター

スティーヴ エリクソン ルビコン・ビーチ
タンジェリン・ドリーム ルビコン(紙)

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