健さんの
プラモコラム

その66
MG カトキ版ガンダムの巻

( MG 1/100カトキ版 ガンダム/ バンダイ/ RX−78−2ガンダム
「機動戦士ガンダム」に登場)


 「○○版」という商品企画はプラモよりもガレージキットの役割だ、なんて事は、ボクは前々から思ってませんでした。このキットの発売は快挙ですが、逆にガレージキットという物が出て来なかったら、とっくの昔に発売されてたのかも。でもでも、今より早い時期に実現していたら、パッケージや説明書までカトキさんのカラーを徹底しようなんて、そこまでこだわった商品にはなっていたかったかな?実は、発売自体よりも、この徹底ぶりこそが快挙なんでしょうね。ガンダムフィックスフィギュレーションの功績も大きいのかな?



 では頭部から見ていきましょうか。ガンダムタイプのスタンダードな分割です。以上。・・・と、ここから先の話は、ホントにデザイン比較でしかないんですよね。なかなかレポートしにくいキットですね。逆にそれだけデザイン自体がウリになってる訳なんですけどね。例えば後頭部。ヘルメットのスソが、1.0や1.5や、HGUCの様にエグれてません。「こうすれば良く動くだろう」みたいなアレンジでは無く、あくまで形に注目したアレンジという事でしょうか?キットの首は上下に大きく動きませんが、それは実機の首関節が伸縮すれば良い訳です。

 ボディは、GM改に近いデザインのイラストが発表されていましたが、両肩にダクトの付いた、GMクウェルに近い形状に決まりました。って言うより、これがHGの説明書に発表された、本来の形ですね。しかしダクトの段差が大きすぎて、鎖骨の辺がエグれた様に見えます。GMクウェルの様に段差が小さければ、もっと自然だったと思います。

 説明書のカッコイイ画稿を見ると、エリを高くする事で、エリの内側よりも肩を高くしてある様に思えます。単にダクトの上下幅を狭めるだけでなく、この辺がコツだった様ですね。ダクトが突起に見えれば、エグレた印象も無いハズです。胸のダクトはフィンの可動ギミックの無い固定式。やはり外観重視なのかな。ボディ内部のフレームはGM改と共通ですが、コアブロックはMGガンキャノンに近い物を内蔵。新金型で、細部のディテールが異なります。

 は、後部の開閉式バズーカラックを再現。VER1.5、GMクウェル、GM改と、連邦MSを発売する度に、股間のVマークが小さくなってるんですね。前フンドシの側面にはスラスターが付いてますが、大気圏突入用の冷却装置と両立するのかな?なんて気にし過ぎでしょうか?モデルグラフィック連載「ガンダムセンチネル」で立体化された時(90年7月号)に描き加えられた物の様です。

 フロントスカートは、コンバーター(黄色いブロック)が、スカート端に合わせて外側寄りに、傾いて配置されているのが特徴的。これもセンチネルからの変更点で、HGの説明書では、アニメと同じ水平です。GMクウェルでも同じ配置ですが、今回はスカートが、かなり末広がりのため、GMクウェルの時より派手に傾いてます。カトキさんの画稿でも、ここまで傾いてはおらず、やはり隠し味程度の傾きが良かったんじゃないでしょうか。って言うか、初で急遽開発のMSなら、4個全て水平で、無難な設計をしたいと思うのが人情では?

 サイドスカートには、スラスターが付いているんですね。GランナーはGM改と共通なんですが、このサイドスカートはGM改の物を除外して、新規パーツを使っています。GM改発売の時に、すでにサイドスカートだけは切替式にしてあったので、このVER.Kaの発売は、その頃から予定されてたのかも。そう言えば、本来GM改には無いハズのバズーカラックが設置されてたり、ますます怪しい素性のキットですね。好きだなあ、極秘開発



 MGジム改と共通のフレームを使用。スネはデザイン自体が違いますが、モモは共通です。金型も共通の様ですが、商品名の部分は差替え式なのかな?スネ外側にはスラスターが有るんですが、これは表面に取り付けたパーツで、内部フレームとは別の物です。(中身はGM改ですから。)ムーバブルフレーム構造では無いよ、という事の表れでしょうか?!(んな事ないって。)ヒザ裏のメッシュパイプは、指定よりも多少長めにカットした方が、ホツレを確実に隠せて良いかも知れません。

 足首はGM改に近い形状ですが、ツマ先が、もっと反った形になっています。足の甲は共通パーツ、赤い部分が新規パーツです。ヒザやクルブシのマイナスモールドのパーツは、GM改のグレーの物が成形色の都合で余るので、ジャンクパーツとして保存しておきましょう。これだけ大きくて揃ったパーツ、重宝しますよ。

 肩アーマーは、GM改と共通の物。上にパカッと開いて欲しかったなあ。GM改の時には特に思わなかったんですが、これ、ラストシューティングには欠かせない可動ですから。

 も、GM改と共通ですね。面白いのは、ヒジのマイナスモールドがグレーでないため、ここだけGM改のパーツを使わず、新規パーツとなっている事です。マイナスモールドは上腕の内部フレームの一部であるため、GM改ではABS製、VER.Kaでは通常のプラ製です。でも通常のプラでヒジ関節を構成するのは弱いという事で、ヒジブロックと接する回転軸に、ABSパーツを被せてあります。ポリキャップならぬ、ABSキャップですね。

 ABSキャップかぁ。ポリキャップに負けない保持力が有って、塗装も接着も、ヤスリがけも可能とくれば、WAVEコトブキヤから、色々発売しても良いかも知れませんね。キャップ側だけでなく、軸側もABSのパーツが発売されると良いですね。マジでどうですかね?

 手首は、GM改と共通の可動指タイプの他に、ライフル用の右手と、左ゲンコツが付属します。ライフル用の右手は、一体の4本指を前からハメ込み、親指を別パーツ化する凝り様。左ゲンコツは、やはり親指別パーツの上、指の根元側(何というのかな?)も別パーツ化してあり、全ての関節をシャープに再現しています。「インジェクション成形の限界」なんて良く言いますが、やはり工夫しだいですね。

 ランドセルは、GM改の物を2本サーベルのタイプに変更した物です。内部フレームは共通パーツ。ここも、GM改発売時にVER.Kaまで予定してあったと匂わせる部分ですね。フレームは、最初から2本サーベルにも対応した構造でしたからね。(なのに予想出来なかった!くぅー!)バーニアは、デザイン自体は共通なんですが、新規金型で、スジ彫りの太さが違います。VER.Kaの方が圧倒的に細くて、スケールモデル風

へへへ 背中に車がついてるんだい(ウソ)

 ついでに背面は、背骨の部分にスリットが有り、コアファイターの尾翼が見えているのが特徴的。尾翼を展開したままでの合体も可能という設定なのかも。それから、後ろフンドシの出っ張り具合は、ちょうどランドセル表面に合わせてある様にも感じます。トレーラーに寝かせた時、キチンと接地するべきだ、という主張なのかも。

 武装です。ビームライフルはスコープとフォアグリップが可動式。アニメ設定とは、似ている様でかなり違いますね。スコープにはクリアーパーツを使用。ハイパーバズーカもスコープが可動。ライフルのスコープと共通化されたデザインとの事ですが、あえて(?)僅かに異なるデザインとなっています。パーツ分割はMGガンダムよりも細かく、サイズは1センチ程度長くなりました。

 ライフルとバズーカに追加された突起は、スコープが破壊された時に、人間同様に目視で射撃するための照準器との事。つまり普段の射撃にカメラアイは不要なんですね。ラストシューティングの時も、ちゃんと見えてたワケか。ん?アニメ設定では、バズーカにスコープは付いてませんけど、カメラアイで狙ってたって事ですか?確かに、付けるのなら両方に付けた方が、説得力が出ますね。


上はMG−G3ガンダム(VER.1.0)、下はVER.Kaの前腕とバズーカ。
前腕は、どちらも手首をいっぱいまで下に振った状態。VER.Kaでは、元々手首に角度が付いているため、ストレートにすら、なりません。
一方、バズーカのグリップの角度は、VER.Kaの方が急角度になっています。


 バズーカのグリップは、MGガンダムの物と比べて、角度が急になってますね。それに加えて、手首の部分に角度が付いたタイプの腕になってるので、ちょっと肩に担ぎにくい感じですね。ここも実機の手首は問題なく可動するとして、デザイン優先のキットという事でしょうか。また、白とグレーに塗り分ける色指定となってます。キットはグレー一色なので、ここは塗装で再現しましょう。


バズーカを肩に担いだ状態の比較。左がVER.Ka、右がMG−G3ガンダム(VER.1.0)。
VER.Kaは、グリップを握るというよりも、手に引っかかっているだけの状態。
逆に、バズーカを脇に抱えるポーズは、手首に角度が付いている分、余裕が有るので、ゆったり美しく構えられます。


 シールドは、GM改と同等の物です。腕との接続用ジョイントは2種あり、腕の、どの面に取り付けるかを選択出来ます。シールド裏にはサーベル2本を装備出来ますが、肝心のサーベルが2本しか付属してません。やはり背中とシールド裏に2本ずつ、4本装備出来るように数を揃えて欲しかったですね。センチネル掲載号には、バズーカラックにアダプターを介して腰の後ろにもサーベルを装備出来るという設定が紹介されてます。せっかくだから、これも見てみたかったですね。

 コアファイターは、MGガンキャノンと同じサイズの物が付属しますが、新金型となっています。スジ彫りが格段に細くなり、スジ彫りパターンも一部異なっています。機首の先端は、従来のMGではインテイクの様な形状だったんですが、今回はフラットな先端となっています。インテイクなら胴体左右に有る訳だし、機首から吸気しても、どこへ通すのか謎だし、ここに無い方が自然かも。実はアニメ設定でもフラットです。

 組立時間は3時間でした。不満点も挙げましたが、カトキさんの画稿自体は、やはりカッコイイなと納得します。あと一歩画稿に近づければ、文句無かったかな。しかし、どうでしょうね?発表以降に増えていったGMファミリーとの共通性を盛り込んで、説得力は高まったかも知れませんが、GM系とガンダム系のキットをミックスすれば自作出来てしまいそうな印象にもなっています。事実、そんな作例記事も有った様に思いますし。



 GMはガンダムを元に変更を加えて作られた機体なので、違ってて当然な訳ですし、あまりデザインを揃えなくても良いんじゃないかな?と思います。って言うか、発表当時のままのVER.Kaが欲しい!という人、多いんじゃないでしょうか。アレが1.0で、今回のは1.5みたいな。ぜひ改めて、当初のデザインでも発売してくれませんかねー?ボクなんか、ハッチフルオープンの、固定モデルが欲しいと思ってます。

 とは言え、「今作るならば、最新の情報に合わせて練り直すべき」と判断するのもカトキさんのセンス・ポリシーな訳で、そう言った意向まで反映してこそのデザイナー・ブランドとも言えます。これまでVER.Kaがガレージキット化された事は何度か有りましたが、いずれも当初の物の再現を第一に目指した物だったろうと思います。作家本人が、常に最新の物に刷新したい意向なら、このキットの方がよほど作家の魂を反映していると言えるのかも。

 そう考えると、「コイツは、そこら辺のレジンキットよりも、はるかにガレージキット的じゃないのかな?」なんて思えて来ます。せっかくここまで個人の作家性を前面に出したキットなんですから、手を加えたい人も、ぜひもう1個買って、無改造で鑑賞すると良いと思いますよ。



おまけ

 このVER.Kaが出ると発表されて以来、ボクの周りでは、このキット自体よりも、「次は何が出るんだろう?」という事の方に関心が集まっているように思います。色んなMSのカトキ版を出すんでしょうか?ZZなんかは欲しいですね。センチネル版バーザムとか、あの辺を希望する声も多いです。ボクとしては、藤田版Zとか、大張版ドラグナー等、他のデザイナー作品も扱って欲しいと思います。

 実現したら嬉しい事ですが、他のデザイナーを招いた場合も、今回の様にパッケージまで徹底して監修してもらう事になるんでしょうかね?バンダイにおまかせ?他のデザイナーの作品でも、パッケージだけはカトキさんが?色んなデザイナーの意向を反映してるうちに、統一感が無くなっていくのも妙ですし。

 先の事はさておいて、今回ボクが一番残念に思っている事。「1/20カトキさんが付いていればなあ・・・」オマケに弱い性格なんです。


2003.1.11 健 竹史

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