健さんの
プラモコラム

その54  ガンダムアストレイの巻

( 1/144 ガンダムアストレイ・レッドフレーム/ バンダイ/
MBF−P02 ガンダムアストレイ 「GUNDAM SEED ASTRAY」に登場)


 なんとも評価しづらいキットですねえ。アニメの放送前で、しかもこれからスタートする外伝に登場するMS。キットの完成度だけに注目しようとしても、「どんどん省略して安くしてます」というスタイルですからねえ。欠点を指摘しても意味がない訳です。

 この「安くてシンプル」って言うか、ズバリ「ろくに動かない」という仕様、どんなもんでしょうね。どんなに凝ったギミックのキットが出る時よりも、世間が大騒ぎしてるのが、逆に面白く感じたりもします。そもそもユーザーというのは、簡単には満足しないものです。どんな可動のアイデアにも、すぐ慣れてしまう。人によっては、最初から驚きもしない。(ボクも含めて)マニアどもめ、どうせ何を発売しても満足しないなら、これでも食らえ!」てな気分にもなるってもんです。(あわわわ)



 すごいキットが欲しいのは当然なんですが、初心者に安心して薦められるキットが、SD以外にも欲しいのは事実です。それに、価格やパーツ数に制約を加えて、何かをあきらめるという事で、逆に「何が欠かせない事か」を見つめなおす機会になると思います。他のどのガンプラよりも、バンダイのセンスやポリシーが現れるキットなのかも知れないなあ、とか何とか思いつつ、見ていきましょう。

 頭部です。前後分割とアンテナの、3パーツ構成。デザインも彫刻もシャープで、なかなかの男前です。首の可動範囲が広く、見上げる方向や、かしげる方向に30度くらい動きます。安全対策なんでしょうけど、アンテナの幅が広すぎて、頭頂部のカメラの視界を塞いでる感じです。カメラが平べったいので余計にそんな印象になってるんでしょうけど。アンテナの前後幅だけでは解決出来なかったのかなあ?残念。

 ボディは、首からフンドシまで一体のフレームに、背面、胸板という3パーツ構成。背面には上体反らしが出来そうなシリンダーのモールドが有ります。胸板で隠れるワキの下にも、肩の上下可動用らしいシリンダーのモールドが有り、今にも動きそうな雰囲気です。実際は、どこも動かないんですけど。MGや1/144のフル可動モデルが欲しくなって来ますね。肩の構造はエヴァにも似ていて、前後スイングも可能なのかも。

 は、前後のスカートでサンドする構成。フンドシはボディの延長なので、ウエストのスイングも出来ませんが、色分け・パーツ分けで、動きそうな印象を与えます。スカート自体も無可動ですが、もともとスカートが短いデザインのため、股関節の可動は良好。むしろ、普段より良く動くくらいです。



 今回の目玉、です。モモとスネが一体で、ヒザが動かないという大胆な構成。片脚につき2パーツという、モナカ式張り合わせ構造です。パーツを4つ切り出して、一瞬のうちに両脚が組み上がった時には、あまりの早さに改めて驚きましたね。どんどん組み上がっていく快感というのも、なかなか良い物かも知れないなあ。なんて思ったり。

 成形方向の制約から、スネのディテールに省略がありますが、このテのお手軽キットにありがちな肉抜きが、突起の内側でしか行われていないのは好印象。モモの内側に大穴が開いている、なんて事はありません。ところで、ヒザの後ろに可動用のスキマが無いというのも、文字通り「スキの無い」印象で、可動モデルとはまた違った味わいが有るようにも思います。塗りたい、スミ入れしたい、妙な衝動に駆られます。案外、この外観は、無可動のガレージキットに近いのかも知れません。プラモがディスプレイモデルじゃイカンのか?そんな疑問もわいてきますね。

 足首は、最近の主流になっている、上からの成形です。足裏なしのワンパーツ。見える所の肉抜きは避けるけど、見えない部分は容赦なし!この辺を見る限り、立ちポーズだけはカッコ良く!という、ポイントを絞った商品コンセプトを感じますね。居直って考えれば、足裏ディテールの無いキットと、足裏の無いキットが、どれだけ違うんだ?という気持ちにもなってきます。

 ところで、可動が簡略化されたキットというのは、過去にいくつも有ったワケです。価格的にも、今回と同じ300円か、その前後の物が多いですね。で、そんなキットのパターンとして、「ヒザは曲がるけど足首は固定」という処理が主流でしたが、ヒザと足首、どっちの可動が大事なんでしょうか?

 1/220のZガンダムシリーズや、ガンダムチョコスナックの経験からすると、ヒザが動いた方が、ポーズは大きく変わるんですが、結局どんなポーズも、カッコ良くは決まらない感じですね。その点、アストレイは股関節と足首がボールジョイントになっていて、「足を大きく振る」事よりも、「ヒネる」事を優先したギミックの様です。ハデさは無くても、ツマ先をハの字に開き、足裏は地面にちゃんと設置します。ただ立ってるだけじゃない、「踏ん張って立ってる」立ちポーズだけは、確実に取らせる事が出来ます。



 股関節、ヒザ、足首とも可動するFGシリーズと比べると、可動箇所の数では負けていますが、立ちポーズのカッコ良さは、格段に向上していると思います。先にも触れた「何を優先するか」という判断で、バンダイは「カッコ悪いポーズが色々取れるよりも、立ちポーズだけでもカッコ良い方がいい」という方向を選んだのでしょうね。

 パーツ点数を減らすには、モモをワンパーツで済ませてヒザを可動にする様な方法も有りますが、そのために肉抜きが必要になっては、外観を損ねてしまいます。どっちつかずな物を出すよりも、ディスプレイモデル志向に特化する発想は、可動が一軸増えるだけで喜んでいた、ガンプラ初期よりも、はるかに成熟した発想だと思います。

 とか何とか言っても「あと100円UPすれば、ヒザも動いたのに、元々300円と決めたのが気に入らない」という意見は出て来るんですけどね。でも、200円UPすればヒジもヒザも動いただろうし、さらに100円で交換用の手首も付属したでしょう。そんな発想では、結局「コレクションモデル」や「入門用キット」は発売出来ないでしょうね。目的を見失えば、ポリシーの無いキットに成り下がりますからね。

 長くなりましたが、続いてランドセルです。サーベルも含めて、ワンパーツ成形。背中から浮いた様な配置のデザインなので、裏の肉抜きが見えてしまうのは残念ですが、他のガンダムでは背中に密着したデザインみたいだし、今後は問題ないと思います。(って言うか、ストライクガンダムにはランドセル付いてないしぃー)腰に向かって、支柱の様な物が伸びていますが何かギミックでも有るんでしょうか?なんだかグリップにも見えて・・・(まさかゾルダのファイナルベント!?)



 肩アーマーは、外装とメカ部の2パーツ構成。ボディの組み立ての時に、はさみ込んでおく必要があります。発売前は、ボディにポリキャップが仕込んであって、肩アーマーの付け根から着脱出来るのだろうと予想してましたが、実際には、ポリキャップで着脱出来るのは肩アーマーと上腕でした。腕がグリグリ動くし、ヒネる事も出来るし、肩アーマーが腕に固定されずに自由度が有るし、予想よりも良い構成ですね。最少パーツで、かなりの効果をあげていると思います。

 は、上腕から手首まで一体のパーツに、上腕の内側、前腕の後ろ側、手の甲をハメていく、4パーツ構成。前腕はパーツの肉厚の都合で、一部色分けが正確では無いので、塗装してやりたい部分です。成形方向の都合で、丸モールドが片側だけ省略されているのも残念ではありますが、ハードポイントを設置しながら肉抜きもせず、ディテールもここまで再現してあれば、ベターな出来ではないでしょうか。

 ヒジは可動しませんが、少し角度が付けてあります。手首も無可動。ライフルのグリップがかなり斜めなので、ゲンコツの穴は、斜めにもまっすぐにも物が握れるような形にしてあります。

 ポリキャップは、上腕、股関節、足首の計6箇所。すべて共通の形で、向きも対称なので、組み付け間違いが有りません。なにしろ球に通し穴が開いてるだけのシンプルな形ですからね。着脱も容易、と言うより、はさみ込むのを忘れるミスが起きません。組み間違って、そこで嫌になって投げ出してしまう、そんなトラブルがありません。(これで肩のはさみ込みも無くなれば、完璧なんですが。)一つ完成させれば、作る喜びを知ってもらえる。初心者でもミスを起しにくい構成は、単にパーツが少ないという以上の、すごい心配りじゃないでしょうか。



 武装は、ビームライフルとシールドが付属。手持ち用のサーベルは付属しません。珍しく平たい形状で、ちょっと持たせてみたかったですね。ライフルはワンパーツで十分な出来だと思いますが、本来はスコープの前に溝があるデザインの様です。1/100でも出れば、入り組んで面白いライフルが拝めるかも。シールドは、ピンで前腕に接続します。持ち手は無いので、こちらもワンパーツ。シールドを構えるポーズに関しては、やっぱりヒジ関節でヒネれると嬉しかったですね。

 てな構成で、全29(+ポリ6)パーツ。全部切り出してから組み始めても、間違わないと思います。組立時間は15分。もっと早い人もいるでしょう。ゲームのタイムトライアルみたいに、早組みコンテストでも開けそうなキットですね。ダブリが無くて、素材もプラだし、食玩並みの価格でここまで出来ていれば、不満は無いんじゃないでしょうか?という消極的な評価も出来ますが、ボクはやはり、ディスプレイモデルに近い新スタイルの提案として、もっと積極的に評価したいですね。

 近年、発売される点数は少ないのに、主役級のMS(それもガンダムばかり)が何体も登場するようになって、敵役や量産機がキット化されない事が多くなっています。値段を下げて、リリース点数を増やしてもらえるなら、その方が嬉しいという考え方も出来ますね。もちろんフル可動モデルも欲しいんですが、今では人気が定着した後でリファインするという事も盛んですし、ストライクガンダムあたりでは、1/144可動モデルの話も有るみたいですから。(そう、これしか出ないとなると、納得出来ない人は増えるハズ!)

 ストライクは、フル可動モデルを単品で発売し、互換性のある装備変えを廉価版で出す様な事も検討されてるみたいなので、ぜひ実現して欲しいもんです。他にも、イージスの可変モデルとかね。

 このアストレイの場合は、外伝の機体という事で、どこまで力を入れてもらえるのか、ちょっと心配なんですが、あまりにスタンダードなストライクよりも、ボクはこっちの方が好きですね。メカむき出しの面白さ、と言うか、ターンエーのデザインを引き継いだような感じもするディテールも良いです。アニメにするには線が多すぎるから描かないけど、他のガンダムもフレームはこんな感じですよ、という事なのかな。

 それから、この価格なのにいろプラという豪華仕様ですが、この辺も、「可動は簡略化出来ても色分けは欠かせない」という優先順位の付け方に、ポリシー(あるいは時代性?)を感じます。シールこそ付属しませんが、単色成形の時代は過ぎたんだなあ、なんて、改めて感じてしまいました。



おまけ

 安くて簡単という以外にも、アニメ本編よりもプラモ発売が先行するあたり、新作アニメをPRしたい意図も有るんでしょうね。(プラモを売るためのアニメ、というのと逆の発想ですが。)新規のファンが新作を見てくれると言うのは、旧作も含めたシリーズ人気の維持のために必要と思います。このキット、商品であると同時にビラ配りでもあると思うんですが・・・内箱が説明書になってるというのは、ちと寂しい気がしますね。

 やはり300円と言うのは相当なサービス価格で、紙1枚のコストも節約したいんでしょうか?(紙を同封する手間も人件費に関ってきます。)でも、アニメの日程や関連記事、外伝の連載スケジュールとか、設定をバンバン載せて、ユーザーの気を引くためにも、ぜひ別紙の説明書は欲しかったなあ、と思います。箱の面積では、スペース不足ですよ。
 
 説明書をファイルしているユーザーとしても、厚紙とか、規格外のサイズにならない方が嬉しいんですが、なんとかならないモンでしょーか?




2002.9.7 健 竹史


  

1/144 ガンダムアストレイレッドフレーム
1/144 ガンダムアストレイブルーフレーム
1/144 M1アストレイ

  

機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 2
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 3



機動戦士ガンダムSEED ASTRAY B

  

機動戦士ガンダムSEED ASTRAY  1 角川スニーカー文庫
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 2  角川スニーカー文庫
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY 1 角川スニーカー文庫


[HOME]

inserted by FC2 system