健さんの
プラモコラム

その51 HGUC シャア専用ザクの巻

(1/144 HGUC シャア専用ザク / バンダイ/ MS−06S
シャア専用ザク 「機動戦士ガンダム」に登場)


 今度のHGUCは本当にハイグレードです。旧1/144から20年以上、今度こそ納得です。ザクのキットは、実に長い時間をかけて進化しましたね。この歴史を見続けてきた、ガンプラ第1世代は思うのです。「たった1年でF、F2、FZって、本物のリニューアルの方が、プラモよりも早いじゃないか!」

 ここはぜひとも、年3回のペースで、ザクのプラモのバージョンアップをお願いしたい所ですね。(こう言われると、統合整備計画とかって、結構ウソくさい早さでしょ?)なーんて戯れ言は置いといて、注目のキットを見ていきましょう。



 頭部です。MGのF2ザク同様、モノアイ下で上下分割という構成です。ガタつきが無く、モノアイシールドのパーツ上下幅に余裕がある分、今回の方がスキが無く、カッコ良く仕上がります。モノアイシールドが左右に回るので、モノアイが動いたように見えるというギミックが良いですね。回そうにも指が届かないサイズなので、頭の上下分割は接着しないとか、外から動かせるように何らかのギミックを追加工作すると良いかも。

 頭部の動力パイプは、毎度の事ですけど、成形の都合で節が一定方向に彫刻され、リアルさが損なわれています。ミゾの彫刻が深く、凝った物になったためかも知れませんが、実はMSVの頃のパイプの方が、ミゾの角度をパイプのカーブに合わせて変化させ、ちゃんとした「輪切り」になってるんですよね。今風の凝った彫刻でも、傾斜面に合わせた成形方向に振ってやれば、多少は改善するんじゃないかと思うんですが、どうでしょう?

 市販のブラスパイプに交換する人も多いでしょうが、高価な上に重くなるので、キャスト製の手首セットに、動力パイプも付けてやれば、喜ばれるんじゃないでしょうか?

 ボディです。HG(08小隊版)の様なコクピット再現は無く、腕(肩関節)が前寄りにスライドするギミックを内蔵。HGUCガンダムと同じですね。いずれ色替えで一般兵用ザクも出るのかと思うと、このギミック、やっぱりジムにも仕込んで欲しかったなあ、と、今更ながらに思いますね。ザク系恒例で、ウエストの可動は今回も無し。フンドシだけでも前屈みに動けば良いのになあ。回転が無理でも、他に仕込めるギミックは有るハズです。

 スカートは、サイドとフロントが可動式。フロントは、動力パイプ下でつながった、左右一体の形状です。サイドスカートには取付穴があり、武器が装備出来ます。今回はヒートホークが付属。色替えやバリエーションキットで、他の武器も追加して欲しいもんです。

 は、ずいぶん太くなりました。比べてみると、HGはモモが細いだけでなく、ヒザの辺りが締まったシルエットなんですね。今回は、MSV当時に決定版と言われた、マインレイヤーに近い下半身になったように思います。もちろんスソの表現が充実したり、足首が左右対称になったりと違いはあるんですが、こうして見ると、MSVも下半身に関しては、悪くない感じですね。


近年のザク系キットとの比較。
左からHG、HGUC、FG。



なつかしのザク系キットとの比較。
左から旧1/144、HGUC、マインレイヤー。
(マインレイヤーは一部06R−2のパーツを使用)


 ヒザ前側のメカ部の露出が少なくなったのも、HGとの大きな違いと言えるかも。HGのデザインはMGを元にしてますが、MG当時は関節メカの露出してなかった一年戦争MSを、初めてリニューアルした時期という事もあり、やたらと関節をムキ出しにするアレンジが多かったと思います。それだけでは可動範囲は思ったほど広がらない事が分かったり、他のアイデアも出るようになり、形状面のリニューアルに主眼が置かれるようになったと言う事でしょうか。逆にヒザ裏側は、必要な分だけ、HGよりもしっかりエグってあります。

 スネのパーツ構成は、FGでは前後分割でしたが、HGまでと同じ左右分割に戻りました。今回はS型とF/J型で、スネのバーニアが違うとかいった演出が無いためです。FG(デザイン的にはPG)の頃には、S型の推力は、強化されているという判断だったんでしょうね。で、HGUCはアニメイメージを大切にするシリーズでもあるし、説明書に解説(詳しくは後述)を用意して、外観(バーニア)の違いを必要としない解釈を成り立たせているのでしょう。(こっちの方が、知恵遊びとしての設定作りが上手いと思います。)



 足首の可動は、今回最大の見所です。コレはもう、可動というより、展開(ステイメンの腕並み)とか、変形(ガブスレイも真っ青)と呼ぶにふさわしい領域。これはフル活用するものでは無く、ポーズに合わせて、3重関節を微妙に使い分けて、足裏接地性を高めましょうと言うモノです。まあ、タカラのダグラム並に、直立しか出来なかったHGザクを思えば格段の進歩なんですが、開脚に対しては、あとひと息という所でしょうか。

 開脚ポーズのコツは、先に関節を引き出す事です。あまり不自然に見えないと思います。ちなみに、関節を改造した経験では、コトブキヤのダブルボールジョイントの両端をWAVEのPキャップに接続して引き出し式にすると、接地性の高い関節が簡単に作れます。内部で伸ばしたりズレさせたりしやすい、定位置の無いような関節なので、精度の高い工作が苦手な人にもオススメです。左右の脚で多少、取付位置が違っても、中身を歪めて、外観は対称のポーズが取れますよ。

自作の足首関節の構造図。
右は軸位置が正しく中心に加工出来たが、左はズレてしまった、という例。でも、左右とも同じポーズを取らせる事が可能です。Pキャップを使わず、エポキシパテを詰めて、穴を開けて差し込むだけでもOKです。



 です。右肩ブロックがムキ出しのザクですが、可動のための切欠きは大きいものの、関節メカ部とのスキが無いのが好感度高いですね。上腕は恒例の筒型タイプ。前腕は、腕の甲と内側を別パーツ化してあります。これは、ランナーの配置から、何らかのバリエーション展開のためとは分かりましたが、正解は、まさかの「ガルマ専用ザク」でした。(内側がボディと同色になります。)ガルマ専用ドップも、このためのムード作りだったんですね。

 スパイクアーマーは、HG並のボリュームで、FGをさらにカッコ良くした様な形状。上腕まで被さる様な配置が絶妙ですね。取付けはHGUCグフの様な、腕を横に上げるとアーマーが浮き上がり、顔に被さりそうになる構造です。あまり横に上がらなかったHGと比べれば、HGの限界以上に上げた時だけ起きる現象なので、問題ないと思います。(とか言いながら、ここにも足首みたいな可動が入ればなあ・・・狭いけど。)

 シールドは、HGより狭く、FGより広い幅で、ゲルググマリーネのスパイクシールドに近い幅になりました。長さは割と一定してるんですけどねえ。今回のシールドは、取付部にボールジョイントが使われ、2枚構造で厚みも再現してあるという、充実した内容です。あ、厚みが再現してある分、実は今まで一番充実したザクシールドを持っていたのは、マリーネって事?!

 手首は、握り手と武器持ち手が、両手とも付属。これで2丁装備も可能かな?!と喜んだら、マシンガンのバズーカも、スコープ位置が右手持ちに合わせてあるんですよね。じゃあ、マリーネやトローペンの90mmマシンガンを借りて来れば・・・と思ったら、グラグラで持てませんでした。MSVの06R−2のバズーカなら、スコープが動くから・・・と思ったら、手首のサイズが大違いでした。上手く行きませんねえ。彫刻はシャープな、良い手なんですけどね。(サイズも近いんで、むしろマリーネに流用出来そうです。)

 握り手の方は、トローペンのシュツルムファウストでも持てれば良かったんですが、小指側の穴が小さいため、そのままでは持てませんでした。こちらも、マリーネ以上にシャープな彫刻の、良い手なんですが。

 ランドセルは、設定通りにバーニア無し。でも解説書には、「推力向上が計られ・・・」と書かれてたりします。そんな些細な事よりもアニメ版のランドセルである事が無条件に嬉しい世代なんですけどね。別のランドセルを装備した機体が有った事を否定はしない解説になっています。



 腹から背中へ通る動力パイプは、軟質素材の弾力を活かしてカーブさせて取付けます。カーブさせたい付近を肉薄にしてあり、狙い通りに、きれいなカーブになってくれます。これで、キチンとした「輪切り状態」のパイプを実現しています。頭部の動力パイプにこの方法を使っていないのは、カーブがゆるい事と、肉薄の細工なんかしたら、目立つ場所なので良くないという判断なのでしょうね。

 武装です。ザクマシンガンは、マガジンをオフセットさせない、アニメに近い形状。ストックが胸にフィットする形状なのも良いですね。(実は当然の事なんですが。)マガジンはワンパーツで、裏は肉抜きしてあります。残念。バズーカは、背面のバズーカラックに固定出来ます。武器セット、MSV、HG、HGUCと、発売される度に大きくなっていきますね。スコープとフォアグリップが可動しますが、全周自在に可動していたMSVのプレイバリューには負けますね。

 ヒートホークは、腰に専用ホルダーを取付け、そこに収納する仕組み。という訳で、ヒートホーク本体には、外観を損ねるピンも無く、機構的にも説得力が有り、満足できる内容だと思います。腕の可動範囲も広いので、両手持ちも決まりますよ。

 組立時間は、1時間15分でした。ポーズが決まらないもどかしさを一気に解決する、なかなかの優良キットですよね。ザクマシンガンを正面向きに構えるとか、スコープと視線が一致するとか、そういったポーズが、無改造で実現するとは。肩関節脱臼の様に見える可動も、ゴッドガンダムがアニメの中でやってるんだから全肯定ー!!



 今後の展開は、ガルマ機、量産機、06Rまでは行って欲しい所ですね。そろそろMSVもフォローしとかないとマズイでしょ。あと、ガルマのついでに、新金型ボディで装飾入りのドズル機をぜひ。一度思い切ってボディパーツを余らせてしまえば、なしくずし的にボルジャーノンも出るかも・・・という下心を込めて、希望します。

 その度に残りの武装を少しづつ付属させてもらえると嬉しいですね。何しろ武器セットのミサイルポッドは合わないし、トローペンのシュツルムファウストもピン径が違って腰に付かないし、デック・キャリア(要塞攻撃用爆弾)なんて言う、立体化されてない武器の設定画も有る様ですからね。(最後のは欲張り過ぎかな?)




おまけ

 このキットの一番気に入ってる所は、実は説明書の解説だったりします。「通常のザクの3倍のスピード」とは、機体性能だけでなく、パイロット(シャア)の腕によるものだったという指摘なんですが、ボクも同じ意見です。MSが最高速度で戦闘をするとは思えず、「3倍のスピードで接近」したのは、一般兵が最高速度を出していないからだと思います。「3倍は3割増の誤り」などの説もありますけど、もっと現実的でしょ?

 障害物をかわし、目標を射程範囲に捉えながら、コースを読ませないトリッキーな動きが、全ての兵に最高速度で出来るワケありません。移動速度と戦闘速度は違うという訳です。例えば、200キロ出せる自動車は有りますが、最高速度で通勤する人、いませんよね?カーブや車庫入れでは、徐行もしますね。

 データってのは、どういう時に、どう参考にするのか考えて使わなくちゃイカンなあ、と思うのであります。

2002.7.30 健 竹史

[HOME]

inserted by FC2 system