健さんの
プラモコラム

その23 UBE DOG「ロボくん」の巻

(山口きらら博限定キット / 宇部興産株式会社 企業CMキャラクター)


 7月14日から開催される「山口きらら博」会場の阿知須町は、故郷・宇部市の隣町です。宇部市を代表する企業・宇部興産がパビリオン出展し、企業マスコットキャラのプラキットを発売すると聞いたのは、つい先日の話。
 
社内で予約先行販売されたんで買ってみた。作ってくれない?

 なんて考えが甘い。一度手にしたプラモは、二度とウチの敷居から出ていく事は無いのです。改めて会場で買ってね。(極悪非道)という訳で、異色のキットを、正式発売前にレポートです。まずはキャラ紹介から。


 
 97年からテレビCMで活躍している「ロボくん」は、企業CM用に、「AKIRA」等の大友克洋がCGでデザインしたもの。宇部興産は素材・技術を開発するメーカーで、ロボくんのボディには同社製の各種素材が使われ、同社製品群の機能を備えているという設定。「CMに出る」目的にかなったコンセプトで、しかも遊び心がニクい。
 
 CMは数バージョンある様ですが、ニューヨークフェスティバル広告賞・クリオ賞、ハリウッドのIBA賞、ロンドン国際広告賞等に続々入賞との事。地元ローカル番組内での放送のため見てませんが、少なくともキャラクターの作り方は、CMの手本とも言うべき秀逸な手法ですよね。
 
 なお、県外向けにインターネットでもCMを公開中。「UBE」とか「UBE DOG」で検索してね。全身各部の素材設定も見れます。(怪獣図解のノリ?)では、キットの方へ。
 
 パッケージはCM内の物らしきCGイラストを背景に、「お座り」ポーズのキット写真。横長の箱にはリボンが印刷され、博覧会みやげのムードを演出。また、箱の構造は再販マシーネンクリーガー方式の外箱に、ダンボールの内箱。うっかり落としても開きにくく、大荷物の手提げ袋の中でもツブれにくい、遠方からの来場者への配慮が良いですね。
 
 中身は、白、黒、グレー2色、透明ポリの5枚ランナー。セットアップ用シールには全種に予備シールを用意。1000円は安いですね。宣伝を兼ねてるから実現したサービス価格?そう、本体のABS樹脂「サイコラック」も、ヒゲや関節のポリも、自社製品なのです。これは例えばアナハイムが、自社素材でガンプラを製造販売する様な物ではないですかね。素材メーカーならではの企画、技術屋の醍醐味。うらやましくも感じます。



 組立は頭部から。左右分割の頭の内側から、3本一体のヒゲを通します。可動耳のボールジョイントも内側から仕込みます。耳、鼻、ヒゲの先端、ゴーグルを付けて完成。特にゴーグルは、ポリキャップを通しての後ハメです。注目したいのは口もとや、ほっぺたのタルみ。(アゴ中央より、両端の方がタレている。)型のパーティングラインを変化させ、キチンと再現してます。好感度高いですね。
 
 ところで、ゴーグルにはホクロの様なセンサーが有り、唯一の非対称部分となっています。このテのキャラクターは左右対称が好まれると思うのですが、カッチリ整いすぎない効果を狙ったのでしょうか?良い味出してます。
 
 はジャバラ風で、微妙にカーブ。首輪も付いてます。頭側も胴体側も、メカパーツが入っていて、スキの無い構成。頭側はボールジョイントで自由可動します。
 
 胸部は左右分割式ですが、上、左右、ウエストの表面にパネルを後から張り付け、ディテールをシャープに再現。ディテール内の色分けまでも、別パーツ化してます。胸のリング風ディテールは取付角度が傾いてて、少々不満。パッケージで見る限りでは傾かず、3つの丸ポチが左右対称に、Yの字に配列されるのが正しいようです。
 
 このYは「山口県」のYを連想させるデザイン上の重要ポイントで、また宇部市のマークを上下逆にした形でも有るのです。「宇部市の全てを全肯定する」誓いの証、ターンユーマークなのです。(この辺は信じちゃダメよ!)裏側の突起を削って、正しい角度で接着すればOK。上級者は、真ん中に穴も開けましょう。
 
 腰部は上下分割の円筒形で、ウエストもシッポもボールジョイント。腹側には動力パイプ(?)が通ってますが、腰側に固定されて、胸側は宙ぶらりんの状態。つまり体をひねったり、背を反らせたりすると、パイプが外れた様になってしまいます。固定ポーズ派(いるのか?)の人は、自作パイプと交換しましょう。まあ、一般人向けの商品ですし、デリケートなギミックや軟質素材で解決しなくて正解だったでしょう。この方がバリバリ可動するし


 
 前足・後足は、各関節で360度ヒネる事が可能ヒジ・ヒザ・手首・足首はウェーブ社製Lジョイントの球体関節とPキャップの組み合わせに似た構造で、2重(ヒジ・ヒザは3重)関節を実現。特にヒジは、ピンと伸ばせばスキマがほとんど無いのに、よく曲がるのは驚異的。ヒネれるから踏ん張りポーズも可能だし、足裏接地性も良好。



 実はパッケージのお座りポーズも一種のトリックで、モモを180度ヒネって、ヒザ関節を逆向きにしているんですよね。(通常は逆ヒザ。)可動パーツ欲しさで買っても良いくらいの自由度。球体関節を含め、全身全ての可動部にポリパーツが入っています。関節強度も十分で、頑張れば2本足立ちも可能です。
 
 シールは目、センサー、ストライプ、UBEマーク(INTER COOLER TURBO の文字が・・)が付属。パッケージ写真は無塗装で、シールのみで、ここまでの仕上がり。塗装ガイドも無し。プラモ未経験者を対象にしてるのを改めて実感。ガムのオマケと同仕様なのです。(けなしているんじゃアリマセン。念のため。)
 
 ツメ等、挟み込み方式の部分が有りますが、簡単な切り取りで、後ハメ(後接着?)加工が可能です。パーツの合いも良いし、単発の発売で、ここまで完成度が高いとは、思ってもみませんでした。
 
 さて今後の展開ですが、ランナーは全て真四角で、バリエーションキットの発売は、特に考えてない様です。(当たり前だろ。)しかし、きらら博終了後、二度と手に入らなくなるのは惜しいですね。イベント関連ゆえ、社外的な事情もあるかも知れませんが、通販とか何らかの形で、入手可能にして欲しい物です。海外でも知られてるし。(これ目当てに飛んで来れる人は限られてるでしょ?)
 
 例えばウベハウスの住宅展示場での販売。あるいは来場記念品で配っても良いでしょう。ロボくんの図解パンフ等を封入すれば、そのまま住宅の品質のPRになるでしょうね。子供の興味を引けば、「これ、何て書いてあるの?」と、親の目にも触れる訳です。
 
 またCM自体も、全国TV放映が高額で困難ならば、映画館で本編上映前に流すCMも有りますし(人数はTVに負けますが、映像に金を払う様な、関心の高いお客です)、ビデオ店で無料レンタルとか、視聴覚関係に力を入れてる図書館も有る訳ですから、広く一般に見てもらう方法が有ると思います。(ネット公開も続けてネ。)
 
 例えば、「きらら博」の今、「釣りバカ日誌」の新作が山口ロケで作られたと聞きますが、そんな御縁でビデオ化の時に収録して頂くなんていう企画は無理でしょうか?宇部空港に降りたのに、萩の方に釣りに行っちゃったらしいって、地元の友人たちも残念がってましたよ。ダメですか?松竹さん。
 
 それにしても、この様に企業がキャラクターを大切にしてるのは、うれしいですね。他の企業からも、魅力的なキャラクターがどんどん出て来て欲しいし、今回の様な立体物やグッズも積極的に開発して欲しいです。アニメやコミック以外のキャラも充実してこそ、真のキャラクター文化先進国。企業マスコットは、今後力を注ぐべきジャンルかも知れません。
 
 また、資源の無い日本は、著作物を輸出すべきだ、なんて真剣に考えたりもします。特許以上の強みを発揮しますし。日本製品が叩かれていた時期でも、オモチャは大歓迎されていた、なんて過去の実績も有りますから。
 
 てな訳で、ロボくんはボクのお気に入りキャラに加わったのであります。製作時間は1時間15分くらい。スケールは1/4から1/6程度でしょうか?パビリオンでは、ぜひ完成見本を置いて、がんばって売って欲しいと思います。面白い試みは成功して欲しいですからね。では最後に一言。
 
地下に本物のロボくんが隠してある、くらい言って下さい!



おまけ

 ロボくんは、ある意味、地域限定プラモでもありますが、そういう商品も各地でどんどん企画して欲しいですね。広島の原爆資料館で、原爆ドームのプラモを販売していると知った時や、それを模型誌で扱ってくれた時は嬉しかったし、今月は別の模型誌に東京タワーのプラモが紹介されてましたね。

 この近辺でも、厳島神社(大鳥居でも可)、錦帯橋(Ver2.0計画発動記念)等、模型映えする建築物は多いし、ペーパークラフトでも良いから企画してはどうでしょう。倉敷尾道の町並みも好きで、立体地図や飛び出す絵本等、町がまるごとみやげ物になったら、ワクワクすると思います。(道後温泉の商店街地図は最高でした)もう一度行きたくなる、最高のみやげになるのではないでしょうか?

関連リンク:宇部興産ホームページ


2001.7.3 健 竹史

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