健さんの
プラモコラム

その133
 
MG カトキ版ボールの巻

( 1/100 MG ボール Ver.Ka / バンダイ/
RB−79 ボール/「機動戦士ガンダム」に登場)



 モビルポッドまで発売してもらえるとは、マスターグレードもますます充実したシリーズになってきましたね。これで、連邦軍ファースト物で残ってるのはガンタンクGアーマーだけになってしまいましたが・・・おいしい物は後のお楽しみに取っておこうという事でしょうか?

 さて、新製品ラッシュ(&風邪)で、すっかり遅くなってしまいましたが、2004年の最後を飾った傑作キット、取り上げない訳にはいきませんよね。さっそく目を通していきましょう。



 まずはボディから。内部フレームは、コアになるユニットを作っておいてから、さらに左右分割のトラスフレーム(こういう形、トラスって言うんですね)で被う二重構造。単にパーツ構成がゼータクなだけでなく、全後・左右・上下から組み合わさったコアフレームのパーツの継ぎ目を隠す効果もあって、どこから見ても見栄えの良い仕上がりになっています。マーキングシールも、フレームに貼るための物がたっぷり用意されてますし・・・気合入ってます。

 コクピットは、正面パネルどころか足元のペダルまでパーツ化して再現。シートにフィギュアが座ってるだけだった昔を思うと、良い時代になりましたねー。でもコクピット内の再現度が向上すればするほど、パイロットの行儀が良すぎる点に目が行ってしまいます。足を開いてるだけでも、ずいぶんドラマチックになると思うんですけどねぇ。(手足が密着してるほど、金型製作には都合が良いのでしょけど。)上級者は、フィギュアのポーズを変えてみても良いでしょう。

 サイドパネルは、普段だと成形方向の都合から簡略化される事が多いんですが、今回は別パーツ化されているので、しっかりディテールが再現されています。ハメ込む前なら塗装も楽勝ですね。ふと思ったんですが、モニターや計器類の表現として、MGガンダム・クリスタルバージョンに付いていた蓄光シールを貼り込んでやったら面白いかも知れませんね。部屋を暗くして、宇宙にいるつもりで眺める訳です。明るさは十分か?浮いて見えないか?試してみたい所ですが、あのシール、どこへしまったのかな〜?



 ハッチは、引き出して上に開く事が可能。人型MSとは比較にならないほど大きく開くので、作り込まれたコクピット内部をしっかり見せる事が出来ます。キャノピーは、やや緑ががったクリアーパーツで、これを表と裏からハサミ込んで固定する構成。ハッチの裏面だけでなく、厚み部分にもディテールが入ってます。

 ハッチの上下には、アニメ版には無いフックが設けてありますが、これはハッチを保護するバンパーとしての役割が有るんでしょうね。下側のフックは3分割で、垂れたり曲がったりしているコーナーも、良い感じに造形されています。ボディ側面のカメラ(?)上には切り欠きが有るんですが、これもフックでしょうか?(カトキ版ガンダムの肩にもフックが付いてましたね。)こういった実際の運用に欠かせない物が、ちゃんとデザインに盛り込まれてるのが良いですよね。

 後部バーニアは、ボールジョイントで可動する他、奥にもう1箇所関節が設けてあります。つまり二重関節のバーニアになってるんですね。アニメ版のデザインではバーニア類は下方に向いていますが、重力下でホバー推進する訳ではないので、後ろに向いたバーニアが有る方が説得力が増します。元のデザインを活かしつつ解決する案として、元々あるバーニアが後方に可動する様にアレンジされたのでしょうね。二重関節にしてまで可動範囲を広くしてあるのは、リファインデザインの意味を活かして設計してあるからこそ、と言えるかも。



 ボディ側面のバーニアは、アニメ版では3基でしたが2基に変更。代わりに前後に小さなバーニアが追加されています。逆噴射用のバーニアが無いと減速出来ませんからね。(旋回すれば止まれますが、作業ポッドなので後進も出来なくては困ります。)この辺もリアリティを高めるアレンジの1つですね。同じ理由で上部にも小さなバーニアを配置。こちらは可動式で、内部に赤いパーツを配置して色分けしてあります。

 側面バーニアを1基減らしてあるのは、奥行き(内部メカ)が、前後のバーニアとカチ合わないためでしょうか。ノズルパーツ内部は筒抜けで、内部ディテールはフレームパーツ側にモールドされているので、塗りやすい上にリアルです。アニメ設定では、側面の出っ張りはバーニアの丸に沿ったモコモコした形でしたが、スッキリした四角い形にアレンジ。ボディの丸、張り出しの四角、アーム基部の円柱と、単純な形の組み合わせに整理してあるので、内部メカにもユニットとしての説得力が出ています。

 機体下部は、下や横に向けて小さなバーニアが並んでいたTV版と違って、大きなバーニアが1つだけ配置された、スッキリしたデザインにまとめられました。このバーニアは、ボールジョイントでグリグリ可動します。今回はポリキャップの代わりに合成ゴムの専用ランナーが1枚付属、このバーニアの軸受にもゴムパーツが使われています。ボディ下面には大きな穴が開けてあり、バーニア奥のエンジンまで再現。エンジンが収まっている穴の内側にも、細かなディテールが入っています。

 アーム基部の下には四角い出っ張りが有りますが、これはランディングギアの代わりなんでしょうか?アニメ版よりもバーニアは大型化していますが、飾り台を使わず机の上に置いても、安定して飾る事が出来るデザインになっています。



 左右のアーム基部は、下部バーニア周りのリングでつながって一体のユニットになっています。ボディとのハメ込み位置は前後を間違えない様に配慮してあるんですが、おかげでワザと前後を入れ替えて遊ぶのが難しくなっています。アームが後ろに伸びてたら、重機動メカみたいでカッコイイと思うのになぁ〜(バカ芸は禁止!)。ところでアーム基部後方のフタ(A1パーツ)を取り外すと、アーム全体が前に伸ばせるんですよ。より作業ポッドに近いK型ボールは、アームに伸縮機能が有るという事でしょうか。戦闘には不要なので、大戦末期の量産タイプでは廃止されたとか?

 アームはほとんどABS製ですが、根元のボールジョイントの軸受けだけはゴムキャップが使われています。ゴムパーツは根元の関節カバーにも使ってあり、なかなか良い効果を挙げています。設定画ではあまり軟質なイメージが感じられず、ガンキャノンの肩アーマーに近い印象ですね。0083に登場したC型ボールが発売される時には、ボディと同じ色で成形されても違和感は無いんじゃないかと思います。

 上腕(?)の下には金属シャフトが使ってあります。ゼータクな仕様のキットは、組んでいて楽しくなりますね。この金属部分はヒジユニットを動かすシリンダーの様で、その先にはシリンダーのロッドが表現されています。無可動ですし、ヒジに隠れてほとんど見えないんですが、ここはぜひ金属色で塗ってやると良いでしょう。説明書のイラストではシルバーの様ですね。

 前腕はスライド金型を使って筒状にワンパーツ成形。ヒジの下にはTV版には無い副腕が追加され、主腕と合わせて、より大きな物をつかむ事が可能なデザインになっています。ボールの元ネタは「2001年宇宙の旅」に出てくるスペースポッドだと思われますが、副腕が追加された事で、ますます元ネタに近くなりましたね。副腕を展開するとシルエットが大きく変化するので、なかなか楽しいですよ。



 手首は、全ての指が可動するし保持力もしっかりしています。これまでのMGと比べても格段の進歩が・・・って、比べる意味は無かったかな(笑)。ツメの内側や側面にもディテールが入れてあります。後ろに露出したメカ部分は若干の角度調節が可能。本来は手の平とつながっていて動かないんじゃないかと思いますが、ここにガタつきを持たせる事で、手首やツメをより大きく起こせる様になっています。リード線は面白いアクセントですね。他のMSを改造する時にも、使ってみると良いかも。

 手首関節は、主腕・副腕ともヒネる可動が仕込んであります。両手で細かい作業をしている様な、いかにも作業ポッドらしいポーズが出来るので、ボールの魅力が何倍にも増した感じ。それこそ劇中では「飛んで撃つだけ」なので機体の形に意味を感じないんですが、コクピットの正面で精密作業が出来るという、理にかなったレイアウトが活きてくるんですね。1/144ボールを作る時にも、ヒネリ可動を追加してやると良いかも。腕の途中でヒネっても、同じ効果が得られますよ。

 キャノン砲は、砲身をスライド金型で成形。先端に穴を開けたいだけなら、バズーカ等でも先端を別パーツにしてあったりもしますが、今回は先端から根元まで一体のパーツです。ちょうど先端には分割に使えそうなラインも入ってるんですが、パーツの継ぎ目よりもスジ彫りの方がキレイに感じますし、接着の手間も減りますよね。砲口内部のディテールの細かさも見どころの一つ。ここに限らず、今回はルーペで鑑賞したい様な精密モールドがあちこちに彫られていて楽しいですね。

 キャノン砲後部のダクトは、フィンの薄さとか、フィンの間のスキマがしっかり表現されてます。可動部は、砲にいきなり軸を設けるのではなく、ホルダーを介して可動部につながっている様にアレンジしてあります。砲の下(あるいは上)に付いているのは照準器なのかな?モノとしては、ガンタンク120mm低反動キャノンを改修した武装とする解説本もありますが、今回は180mmと解説されています。アニメ版とは別の武装なのかどうなのか・・・とにかく今後はザコなんて呼ばないでね?

こんなポーズで発進するボール部隊も、なかなかお茶目ではないかと思う、今日この頃です。

 飾り台は、整備ドックのハンガー(リフト?)を模した支柱と、薄くて四角いシンプルなベースを組み合わせた物。まわりに設備らしいゴチャメカを並べれば、そのままディオラマに使えそうですね。(欲しかったなぁ、マクロスファクトリ−。)球状のボディラインを利用して置くだけなので、モデル本体に穴も開いていませんし、上下逆にも飾れるスグレモノです。ランナーには「MG1/100ボール」と明記してありますが、実は1/144ボールにもフィットするので、HGが発売される時には付属させたら良いんじゃないかと思います。スケールによってはウォルターガンダムアプサラスハロも置けそうですね。

 おまけに、同スケールのメカニッククルー(ノーマルスーツ着用)が2体付属します。腰に手を当てたポーズと、腕組みポーズで、単純な立ち姿でないのが良いですね。やっぱりディオラマ風の商品構成を狙っているのかな?てな訳で、飾り台に立たせて飾るのも良いでしょう。立ち姿のパイロットが付属しないのは、ちょっと残念。この機会に表情の付いた立ちポーズのパイロットも欲しかったですね。

 組立時間は1時間40分でした。分類もスケールもMGではありますが、最大の見せ場となるよう中身を徹底して作ってあり、お手軽なPGといった感じですね。精密感もディスプレイも、いかにも模型らしい楽しさが有りますし、これならスケールモデラーにもオススメ出来るかな?気に入ってもらえた所で08小隊版(K型)もオススメして、ドム足ザクを撃退するシーンなんか見せちゃえば、もうこっちのもんですよ(笑)。キャノン基部やアーム後部のパーツが除外可能になってますから、K型の発売は考慮されている様です。(ドム足ザクもよろしくー。)

 逆に、側面バーニア周辺のフレームが干渉する事から、金型流用でアニメ版ディテールに準じたキットを発売するのは難しいと思われます。まぁMGは新解釈を盛んに行ってきたシリーズですから、今回のディテールのままで副腕フックだけ無くしたモデルを「一年戦争時のボール」として発売しても構わないと思います。

 カトキ版と言えば、組立説明書も忘れちゃいけません。最初の見開きページにはボールの全身写真が載ってるんですが、1/60ストライクの説明書の様にページをめくると、全身写真が内部写真に早変わり。それまで伏せられていた内部設定の詳細なイラストが目に飛び込んでくるという演出が面白いですね。説明書にもギミックが仕込んであるとは!収録されたインタビューでは量産機の重要性からキットの見どころにまで触れられていて、そのまま「鑑賞の手引き」になっています。本当にプラモが好きな人が作った説明書だと感じました。組む前だけでなく、組んだ後にもう一度読めば、さらにキットを楽しめると思いますよ。

2005.2.23  健 竹史



 おまけ

♪カエルの色の アスランモード

 ド ド ド ド

 ドドドドドドドド

 どこ飾ろう♪


 月刊ニュータイプ2005年3月号付録のザクウォーリア「アスランモード」を、軽く紹介しておきましょう。アスラン・ザラ役の声を演じている石田彰さんが色やマーキングの指定をされた特製キットです。

 表紙に載っている写真を見て「カラフルだなー(ケバいとも言う:笑)」などと思いつつ買ってみたんですが、開封してみると、また一味違った感動がありました。

 「おぉー!なんだかテストショットみたいでカッコイイー!」(笑)



 色替えキットという事で内容は通常のザクウォーリアと変わらないんですが、目玉シールはキチンと付属。本誌の組立説明図中にシールに関する説明が無く、図の外の文章でしか触れられていないのが、ちょっと不親切な気もしました。プラモファンじゃなく、不慣れな可能性のあるアニメファンに組んでもらう物ですからね。特製のマーキングシールに関しては、別ページにキチンと説明が載っています。



 MSとしてはあまりにも鮮やかなグリーンに思えて戸惑いも感じる一方、こんな色をどこかで見たような気も・・そうそう、パラスアテネの緑ですよ。シロッコ様も、今思えば大胆な色使いをされますね。デザインの奇抜さに気を取られて、色の奇抜さに気付きませんでした。(笑)

 本誌の最後のページには、このザクのイラストが掲載されているんですが、これがなかなかカッコイイのです。次号付録の
インパルス「シンモード」と共に戦う活躍想像図。黄緑と言うより蛍光グリーンが近いでしょうか?ぜひご覧になって頂きたい、シブいイラストです。

 イラストに添えられた文章には、某キャラクターが色指定のモチーフになっているのではないかとの指摘もあり、興味深いですね。謎の小道具を持たせたり、カラフルなザクを何機も作って、小隊を編成したくなるではありませんか!(笑)

 付属のマーキングシールは、特にシールドに貼る奴が好きですね。「Z.A.K.U is most important of all,sir!」なんて書いてあります。スネ側面用にも同じ文章が用意されてますね。SEED放送時のストライク・ディアクティブモードは、未発売のカラーを提供する模型的なファンサービスでしたが、今回はもっとグッズに近い感覚のファンサービスの様に思えますね。リアルさだけでなく、シャレた遊び心のプラモも良いもんです。

 と言いつつも、イラストのシブさが頭から離れなくなってるボクなのでありますが。もうシャレでは済まなくなってしまった・・・罪なイラストであります。(笑)

2005.2.14  健 竹史

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