健さんの
プラモコラム

その130 HGUC マラサイの巻

( 1/144 HGUC マラサイ / バンダイ/RMS−108 マラサイ
「機動戦士Zガンダム」に登場)



 HGUCは元々リファイン企画ですから、すでに終了した作品に登場する、イメージの固まった機体を扱うシリーズだった訳ですが・・・。ホビージャパン2005年3月号を読んでいると「劇場版Zガンダムの新作カットに合わせて、HGUCマラサイのシールドに折り畳み機能を追加した」との事。しかもギリギリ間に合ったと言うより、「間に合わせた」って感じだった様です。開発秘話に思いを馳せつつキットを組むと、活躍シーンを想像するのとはまた違った高揚感があって楽しいですね。



 映画化が決まった事でZは再び現在進行形の作品になり、HGUCはSEEDと同じ、手探りで開発しなくちゃいけないシリーズへと立場が変わってきたと言えるかも知れません。Zの商品展開はHGUCを中心に進められるらしいですが、これはMGを出す予定が無いのではなく、MGだけは映画3部作の完結を待って、イメージが固まってから発売するシリーズでありたいという事なのかも。目指せ第2第3のハイマットフルバースト!遠慮の無い新作カットで楽しませて欲しい物です。ガンプラ開発陣は冷や汗物かも知れませんが。ではキットを見ていきましょう。

 頭部は、左右貼り合わせておいて、上から別パーツのモノアイシールドを取り付ける構成。ずいぶん顔が細く見えますが、動力パイプごとヘルメットに収まると違和感を感じなくなります。小顔のためモノアイシールドは思ったよりもコンパクトで、モノアイは無可動。丸い目と釣り目(?)の、2種類のシールが付属します。SEEDデスティニーシリーズ同様、首が前後に動くのが嬉しいですね。クチバシのダクト中央に接着ラインが通っていますが、小顔で処理が難しかったのかも?



 ヘルメットは左右のバルカンを別パーツ化。アンテナには軟質樹脂を採用してあり、薄いのに折れにくくて良い感じです。軟質と言ってもフニャフニャではないので、先端には安全突起を設けています。ヘルメットの形は、旧キットが側面の設定画を重視しているのに対して、HGUCは上面図のイメージを重視している様で、後ろにすぼまったラインを強調している感じ。頭のてっぺん(頭蓋?)やアンテナ基部は前後に詰めてあり、ここは意図的にアレンジを加えているのだろうと思います。(ザクの頭に、より近く見えますし。)

 ボディは、ウエストからエリまでが一体で、それを胸と背中でハサミ込む構成。赤い胸ユニットとオレンジのエリが、クッキリと別ユニットに見えて実感たっぷりですね。コクピットハッチの部分は少々不満。ハッチ下端の装甲厚を再現せず、オレンジ部分との境い目に埋まる様な構成になっています。ハッチを「ブロック」でなく「板」の表現にして、オレンジのコクピットに被さる様になっていれば、ますますカッコ良くなったんじゃないかと思うんですが。ウエストには、途中に折れ線か段差が入った方が良かったかも。ややスッキリした印象です。



 は、フロントスカートだけでなく、リアスカートも左右一体で可動。サイドスカートはいつも通りの取付け方式ですが、前後を挟まれたヒンジの様なデザインのため、真横にのみスイングします。動力パイプは軟質樹脂製。ウエストを一周するリング状のパーツで、前後のフンドシパーツで固定します。フンドシには、スカート取付用と動力パイプ取付用の2箇所の切り欠きが有って紛らわしいんですが、説明書の中で、間違わない様に言葉で注意を促しています。親切な説明書って、やっぱり良いですね。

 です。Zの時代のMSは関節に動力パイプが描かれている物が多い訳ですが、今回はワンパーツ成形されたヒザ関節パーツの後面に、2本一体の動力パイプをハメ込む構成になっています。なかなか見栄えも良く、上手い処理だと思いますね。ヒザ関節パーツは上下方向から成形されているため、側面の丸モールドが省略されています。モモの装甲のフチを少し削って、市販のディテールアップパーツを貼り付けてやっても良いでしょう。

 スネは、フレームにパーツを被せていく方式。わずかワンパーツのフレームですが、これが有るおかげで外装とスラスターを完全に分離する事が出来る訳で、効果は高いと思います。内部の再現は無くても、外観はMGっぽい訳ですね。



 スネ外側の装甲は、スネ後部を半分以上カバーする様に回り込んだ分割ラインをそのままパーツ化。この辺もMGっぽいですね。この分割ラインを再現するため、脚を横からではなく、上から見た方向で成形してあるのも見どころの一つ。ほんとにMGと変わらない発想ですね。足首カバー・ヒザアーマー・外側スラスターの偏向板は別パーツ化されています。デザイン面では、ヒザ周辺のフチのカーブ(広がり)を強調してあるのが特徴でしょうか。 

 足首は、足の甲・クツ・足裏を縦に重ねるスタンダードな構成。設定にある、緩やかに盛り上がったツマ先のカーブを見逃さずに再現してあります。足首関節の周辺はスネアーマーに隠れてほとんど見えませんが、足の甲の外装から内部メカがチラリと見えている様子をモールドで表現してあります。ぜひメカ色で塗装しておきたい部分ですね。

 左肩アーマーは、前後2パーツの貼り合わせで、スパイクは3本とも別パーツ化してあります。肩ブロックにはボールジョイントで接続。ボール位置は奥まった部分なので、外からポリキャップが見える事もなくて良いんですが、腕を横に上げにくくなっています。肩関節を引き出したり、肩関節軸の差し込みを浅くする等すれば、より大きいポーズが取れるでしょう。

 です。肩ブロックは旧キットに比べて、縦横の比率が設定により近くなりました。実はこれ、肩ブロックと言うより肩アーマーでして、トールギス等の様な球状の肩ブロックに四角い肩アーマーが被せてあるのが正解。この辺は旧キットの方が正確で、上面に可動のための切り欠きが無い点なんかも設定に忠実です。可動や簡素化のためのアレンジでも有るのでしょうが、このアレンジのおかげで横長になるのを避けられている気もします。結果的に理想的なシルエットになっているので、良い判断じゃないでしょうか。上面の切り欠きには関節カバーが仕込んであり、ポリキャップが見えない構成。肩関節軸は前に引き出す事が可能です。



 上腕はスライド金型を使って筒状にワンパーツ成形。側面のパネルラインの表現がスジ彫りではなく、段差になっているのが少々残念です。金型のパーティングラインを正面に来させないために、パネルライン付近で金型を分割したのかなー?とも思ったんですが、ヒジ関節の切り欠きの方向に合わせて成形方向を決めるしかなかったんでしょうね。上級者はパネルラインの辺りをパテ等で成形してやると、さらにマラサイらしくなると思います。

 ヒジ関節にも、ヒザと同様の動力パイプが通っていますね。やはり関節パーツに軟質樹脂製のパイプパーツを貼り付ける構成になっています。ただし、上腕の奥につながっている感じには見えませんけど。上腕とヒジの内部が詰まってスキの無いHGUCの構成では、パイプの入るスキマを設ける事は難しいですからね。それでも引き締まった上腕はカッコイイですし、上腕下端のふくらみにパイプがつながっている形は、上手く出来ていると思います。

 前腕は、側面全体を被うアーマーを別パーツ化。やはり、装甲の重なりをキチンと表現してあるとカッコイイですね。設定を見ると、手首付近には腕本体とアーマーの間にスキマが有るんですが、この辺も見落とさずに再現してあります。アーマー裏だけでなく、このスキマ部分も黒で塗ってやると良いでしょう。



 手首は、ライフル用の右手・サーベル用の右手・半開きの左手が付属します。どれもリアルな造形で、今回最大のセールスポイントと言えるかも。いつもの握り手は、ライフルやサーベルが手のひらよりも内側に入り込んで、良く見ると不自然なんですが、今回は本当に握っている様に見えます。ライフル用の右手は普段と同じ2分割。サーベル用の右手と半開きの左手は、一体になった4本指を引き抜く様な分割です。

 特に左手は4本の指の表情が全て異なり、キャストパーツに負けない豊かな表情。縦に成形するアイデアの成果ですが、そのため手のひらのモールドが途中までしか入っていません。他キットの平手を参考に、ちょこっと改造してやっても良いでしょう。

 左手は、ライフルを構える時にフォアグリップに添える事も出来ますが、やはり別に握り手が欲しかったところ。せっかく説明書で「ビーム兵器を2つ同時に使える」という解説を読んで、「ハイザックとは違うのだよハイザックとは!」なんてテンションが上がっているのに、ライフルとサーベルを同時に持たせられないなんて。バリュートを展開する名シーンでも、左手にサーベルを持ってますよ。・・・って言うか、右のシールド裏から取り出すなら、左手に持つ方が自然ですよね。右手じゃ取り出しにくいでしょ?

HGUCハイザックとの比較。マラサイの方が頼もしく思えるのは、アンテナが付いてるからなのか、赤っぽいからなのか・・・?

 バックパックは、2パーツ貼り合わせの本体に、バーニア、3連バーニア、上部タンクの側面を取り付ける構成。バーニア内部は今風のディテールにアレンジされているので、放映当時の設定に思い入れのある人は、他キットの物や市販のバーニアパーツと交換してやると良いでしょう。余談ですが、スネのバーニアは通常装備とバリュート装備の設定画で、内部ディテールが有ったり無かったりします。動力パイプは軟質樹脂の弾性を利用してハメ込む組立て。3連バーニアの囲いは、下端の厚みが斜めになっているので装甲厚が不均一に見えます。一周同じ厚みに見える様に、ちょっと削ってやるのも良いでしょう。

 シールド折り畳みが可能。旧キットでも可動は出来ましたが、2枚を密着させるため、可動部周辺を大きく切り欠くアレンジを行っています。肩への取付け部分にはポリキャップを使ってあるんですが、こんな所にもポリキャップ隠しの関節カバーパーツが使われています。ポリキャップの軸部分は丸見えになってますが、ディテールに見えなくもありません(笑)。シールド裏にはキチンとフタがしてあり、下側にはサーベルが2本セット出来る様になっています。

これが劇場版に登場するとされる、シールドを畳んだ待機状態。スケジュールギリギリで無理して再現したのに、上映時には時間の都合で泣く泣くカット・・・なんて事はありませんよね?試写も行われましたし。

 ところでこのシールド、昔はエルガイムMK−2のバインダーに似てるなぁ」と思ってましたが、コの字に畳んだ形はフィンファンネルそのものですよ!TVの時と同じで楽勝!とか油断してると、映画では痛い目に遭うかも知れません。気をつけるんだカミーユ!

 武装です。ビームライフルは、左右貼り合わせの本体・銃口・フォアグリップという構成で、エネルギーカートリッジの着脱が可能。グリップには小さなピンが付いていて、大型MGモデルの様に、手のひら側の穴に接続して持たせるのでガタつきが有りません。表情豊かな代わりにスキが多くなる手首に持たせるため、武器の方で対策を講じてあるんですね。ハイザックも使った装備ですが、HGUCハイザックの手首とは相性が良くありません。エネルギーカートリッジも、シールドに対して大きめですね。とても2個収納出来そうにない様な。って言うか、MGハイザック付属のカートリッジと、サイズが変わらないんですが。

MGハイザック付属のビームライフル(上)との比較。エネルギーカートリッジは、幅は違いますが長さはほぼ同じになっています。リアルな手首にも注目!

右はフィンファンネル・・・じゃなかった、シールドです。

 ビームサーベルは、他の機体の物に比べて長めのデザイン。形も含めて、前年放送のエルガイムの影響を受けているんだろうと思いますが、解説によるとゲルググのビームナギナタの発展型なのだそうです。スライド金型で穴が開けてあり、付属のビーム刃を取付け可能。ビーム刃はクリアーイエローで、根元がふくらんだ形状になっています。

 組立時間は1時間10分でした。模型誌でも「2005年仕様」なんて言葉が使われて、気合の程が伝わってきますが、事前に話題になっていた「リアルな手首」だけではなく、全身にわたって丁寧に作られている感じがします。もう何体か発売されてみないと、どこまでが2005年仕様なのか、良く分かりませんね。まぁホントに本気みたいなインタビューも掲載されてましたから、「毎回進化し過ぎてて、どこまでが仕様だったのか、さっぱり分からないぞ!」てな事になるんじゃないかな?なって欲しいな!(・・・と、プレッシャーをかけてみたりして・・・:笑)



 おまけ

 予定よりもちょっぴりUPした価格で発売されたため、「もしや、付属するのか?!」と期待してしまったバリュートパックですが、残念ながら付いてませんでしたね。胸・スネ側面・バックパックにハードポイントを設けた新規パーツを用意して、バリュートパック装備状態の物を、ぜひ発売して欲しい所です。大気圏突入はマラサイ最大の見せ場じゃないかと思いますし。展開状態のバリュートはBクラブから発売・・・とか?(ラーメンどんぶり並のサイズですね・・・汗)バリエーション展開としては、このマラサイをパッケージだけ変更してダミーバルーンとして発売する事も可能ですね。(おいおい!)いや、まじめな話、ダミー展開前のカプセルとか、それを持つポーズの手なんかは、バリュートのオマケに付けて欲しいと思います。

バリュート発売のその日まで、ラーメンどんぶりで耐え忍ぶマラサイ。耐え忍べないという人は、100円ショップのプラスチック容器を芯にして作ってみるのも面白いかも知れませんね。あー、バリュート形のラーメンどんぶりを、劇場で発売してみるなんてのはどうですか?(笑)

2005.1.28  健 竹史

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