健さんの
プラモコラム

その114 MG ハイザックの巻

( 1/100 MG ハイザック / バンダイ/RMS−106 ハイザック
「機動戦士Zガンダム」に登場)


 待ちに待った「連邦のザク」の登場であります。Zの放映当時は、いくらジオンの技術を吸収したからといって、地球至上主義の軍隊がモノアイMSばかり使ってる事に多少の違和感を感じた物ですが・・・ジオンの象徴とも言えザクが地球側の手先になってしまう事の心理効果ってのは、けっこう大きい物があるでしょうね。0083でも、連邦軍に使用されるザクを見たデラーズ兵はショックだった様子でしたし。



 最近では、ティターンズのハイザックが緑で、連邦のハイザックが青(こっちの方がティターンズカラーっぽい)のも、ワザとなのかなー?なんて思ったりします。ジオンカラーのザクが反地球主義者狩りに使われる(しかもガンダムの手下として)ってのは、屈辱的な事ですもんね。ついでにティターンズっぽいカラーのハイザックが地球圏全域で使われるってのは、連邦軍をティターンズの下に位置付ける様な印象を与える事につながったのかなどうかな?ってな解説が、連邦仕様機発売の時には説明書に載るのかなー。では、キットに目を通していきましょう。

 頭部は、頭頂部が開閉できるザク系MGキットのスタンダードな構成。モノアイシールドは一部アンダーゲート方式を採用してあります。モノアイは、頭頂部カバーを開いてツマミを回すと左右に可動させる事が出来ます。軽く動いてくれるので、マイナスドライバーが無くてもツメで動かせました。動力パイプは、ABSパーツの芯にリング状のパーツを通すタイプ。取付け後、クチバシ(ダクト)でロックします。

 顔つきはHGUCや旧1/100と比べて、ザクに近くなった感じがします。意図的にザク顔に似せたアレンジなのかも知れませんけどね。モノアイシールドの幅が一定でなく、端に行くほど狭くなるのが本来のデザイン。頭頂部カバーの幅も、本当はもっと広めに見えますね。ここにパネルラインが入ったのは、MGザクよりもハイザックの方が先なんですが、カバーの幅が似てると、こっちがMGザクを真似してる様な、妙な感じです。表情豊かな動力パイプは、もう少し控え目のカーブが正解かも知れませんが、全身の他のパイプと統一観があって、良い判断と言えるかも。



 ボディには、それらしい内部フレームが仕込んであります。シートは別パーツで塗装しやすく、コクピット内壁からも離れているので、ちゃんとリニアシートっぽく見えるかも。ハッチは引き込む様に開く仕組みが面白いですね。

 動力パイプの芯には合成ゴムを使ってあり、ハッチの動きに自然に従います。この動力パイプ、なんでハッチにエネルギーを供給するんだろう?と当時から思ってたんですが、初期のリニアシートと全天周モニターはエネルギー消費が激しかったためなんだそうです。(あくまで”解説書”では・・・:笑)パイプの芯の端にはコブが付いていて、通したリングパーツが抜けない様になっています。通す時には弾力でコブを変形させる訳です。ゴムならではのアイデアですね。

 は、ウエストの回転が可能。ボールジョイントを使ってありますが、前後左右にはあまり動きません。フロントスカートは左右独立して可動、サイドスカートも可動します。リアスカートは固定ですが、下からのぞくとフンドシ後部にはリアスカート(あるいは後部マウントラッチ)を動かすシリンダーらしい表現が有って芸コマ。マウントラッチはフンドシに組み込んだ後にスカートでロックされ、しっかり固定してあります。



 です。股関節はボールジョイントに加えて、軸自体が前後に可動するタイプ。モモは合成ゴムの動力パイプをハサミ込む組立です。ヒザメカ部も動力パイプを組み込んで左右貼り合せ。このゴムパーツ、なかなか良い質感ですね。頭部やボディのリング式動力パイプよりも、それらしく感じます。て言うか、2種類の表現方法が混在してるのが残念。完成見本の様にプラ製リングパーツをゴムパーツに合わせた色で塗装してやると、あまり気にならなくなるかも。

 スネは、内部フレームに前後左右から外装を被せていく構成。このテの構成の場合、フレームパーツに何個ものポリキャップをハサミ込む事が多いんですが、奥まった形にならない様に配慮した設計で、ポリキャップをセットするのがとても楽でした。スネ外側のスラスターユニットは偏向板が可動。裏面も作ってあるので、完成後も着脱を楽しめます。スラスターユニットを外すとスネフレームを見る事が出来、足首関節も丸見えになります。

 その足首関節は、せっかく丸見えになるのにシンプルなダブルボールジョイント。ホントに軸1本で接続してあります。シリンダーの表現でも有れば見せ場にはなるんでしょうけど、可動に専念した分、足裏接地性は良好です。足裏は一体で、ツマ先とカカトが独立可動するギミックが省略されていて残念。代りにMGザクF2の様な、カカトがソールから浮き上がる可動が仕込んであります。



 左肩のスパイクアーマーは、一体パーツで可能な範囲で、スパイクに角度を付けてあります。根元のフチ取りが全周均一になり、HGUCよりも見栄えが良くなりました。サイドアーマーは可動式。前後に付いているマイナスモールドは、ヒジの物とサイズを統一。ついでにモールドの向きも統一してあります。旧1/100の方が設定には近いですが、MGの方が自然な印象ですね。(実はコレ、HGUCの頃からカトキさんの画稿はそうなってたんですが、読み取られていなかった様です。)

 は、前腕と上腕の動力パイプが一体成形で、とても組みやすい印象でした。上腕のパイプは節のスジ彫りが斜めになってる所が有って、少々残念。パイプの再現と可動の両立は、パイプの基部を肩関節メカ部に変更する事で実現しています。旧1/100では設定通り肩関節前後にパイプを通していたため、肩を前後に大きく動かす事が出来ませんでしたが、今回の仕組みなら肩関節軸に干渉せず、外観も設定に近いアレンジにとどまっています。腕を前後に振る場合はパイプの付け根も一緒に動くので、パイプのタルミも最低限で済みますし。もっとも、腕を横に上げる場合を考えると、あとちょっとだけタルミを付けておいて欲しかったですけどね。

動力パイプがボディ内部に繋がっていないため、可動だけでなく着脱も容易です。腕を上げてヒジを曲げるポーズ等は、パイプがピンと張ってしまうので苦手です。あと少しの余裕が欲しかった所ですが、この構成やアイデアは、Z系の他のMSにも反映出来そうですね。

 前腕は、ヒジにシールド取付け用のポリキャップを内蔵。シルエットはジオンのザクに似ていますが、直線的なパーツを組み合わせて構成されていて、改めて見るとジオンっぽくありませんね。胸のダクトと並んで、連邦のザクである事が現れている部分と言えそうです。動力パイプは、ビーム兵器の運用に高出力のエネルギーが必要な事を視覚的に伝えていますし(民間へ払い下げる時はパイプを外してから?)、ザコメカのデザインは世界観を示すためにも大事なんですね、うん。

 手首は、左右とも可動式の物が付属。親指の小さなディテールも、さりげなく再現されています。

 バックパックは、メインスラスターとスタビライザーをハサミ込む組立。スタビライザーは旧1/100でも可動しましたが、今回はメインスラスターも可動します。上部の2つの突起はコンフォーマルタンクだそうで、これもハサミ込みます。ワンパーツ成形されてるのが、さりげなくタンクっぽいかも?上に伸びているのは放熱板、その先端はサブセンサーだそうです。

 サブセンサーはワンパーツ成形で、放熱板の正面から差し込む組立。接着ラインが出ない代りに、後部の色分けが不完全となるので、ここは塗り分けてやると良いでしょう。元デザインでは正面のみセンサーが設置されている様ですが、MGでは後部にもセンサーが有る様にアレンジされています。バックパックと背中の接続にはボリキャップを使用。ジョイントは単純な突起ではなく、それらしいディテールが施してあります。

ザクマシンガン改を構えたポーズ。肩が前に動かせる事と、ウエストが回転する事で、ポーズがそれらしく決まります。この可動、ショルダータックルのポーズにも役立ちそうです。肩を引き出すという発想でも、MGザクF2の頃とは違う方式なのが面白いですね。

 武装です。ザクマシンガン改はフォアグリップが可動式。スコープにはクリアパーツが使われ、マガジンの着脱が可能です。銃身が円柱形でなく縦長になっていたり、フォアグリップの可動軸上の突起が再現されていたりと、旧1/100よりも再現度が高くなっている感じです。

 ビームライフルは、エネルギーケーブルを色分け済みで、エネルギーパックの着脱が可能です。1/144武器セットの物と比べて17%しか大きくなっておらず(実物で言えば2割小さくなった計算)、やや迫力に欠ける印象です。もっともこれは、シールドに予備のエネルギーパックが2個収納出来る設定から導き出されたサイズで、こっちの方が正しいと考えるのもアリでしょう。

 そのシールド(左腕用オプションシールド)は、連邦マークを色分け済み。ジョイント部で回転が可能です。裏面のケースは、フタの開閉部にポリキャップを使用。エネルギーパック2個がピッタリ収まりますが、ピッタリ過ぎて取り出しにくい感じです。収納部の囲みの高さを、エネルギーパックの厚みよりも低くしておけば、取り出しやすかったんじゃないでしょうか。ツマヨウジで引っ掛けて出すにしても、パーツ表面よりも着脱部の穴を引っ掛けた方が、塗装後も安心です。ケースの底面には、エネルギーパックを収める向きがモールドで示してあって親切ですね。



 右肩のシールドはボールジョイントで可動。裏面のパターンは、過去のザク系キットに近い形でまとめてあります。ビームサーベルは1本付属。腰後部のラッチに装備可能です。ヒートホークは一部が2パーツ貼り合せで、2本のケーブルを再現。1/144武器セットではケーブル1本、旧1/100では2本一体(&肉抜き多数)、HGUCにはヒートホーク自体が付属せず・・・ようやく、ちゃんと再現されました。サイズも大きく、なかなかの迫力です。

 ミサイルポッドは、ビームサーベル用のラッチに装備可能。左右のポッドそれぞれがボールジョイントで可動、ステーの後部にはヒートホークを装備出来ます。ミサイルポッドを取り付けた姿は意外と横幅が有り、かなり印象が変わって面白いです。ミサイルは別パーツ化され、1本ずつ仕込む様になっています。

 組立時間は2時間35分でした。丁寧に作られた感じのある、好感度の高いキットだと思います。武器も豊富で良く動きますし。ザコが充実してると、これから数年かけて続々登場するであろうZ関連MSは、並べて楽しいシリーズに育ってくれるんじゃないかな?と、今から楽しみになってきます。(一年戦争ファンを引き込むには、量産機の充実は欠かせませんよね!)旧1/100から引き継いだ仕様として、ジェリドとカクリコンのマークが付属、思わず2機並べたくなってしまいます。ん?マラサイも同じ手口で2個買わされてしまうかも。

旧1/100ハイザック(左)と比較・・・ではなく、いっしょに作戦行動中?旧1/100の、ツマ先の可動に注目です。

 今後の展開ですが、オプションシールド・サイドスカート・ハッチ・腕基部とか、武器全般とか、モモ・頭・肩アーマー・腕・ミサイルポッド・ヒザとか、バックパック・スネのスラスターユニット・シールドなんかが一枚のランナーに集中している事から、ハイザックカスタムの発売は十分に可能性が・・・って、ほとんど差替えですね。連邦マークやミサイルポッドのステーに切替えが有るので、連邦カラー機以外の何かの発売が想定されてるハズなんですが。出来れば過去に実績のあるアイザックも希望!ホビーハイザックは大幅差替えの上に武器も無いという弱みが有りますが、そこはクェスの(出来れば下着姿とかの)フィギュアでも付けて頂ければ・・・ダメ?



 おまけ

 良い機会なので、旧1/100ハイザックを組んでみました。ずっと組んでみたかったキットなんですよ。頭部は、頭頂部ハッチのスジ彫りが平行でなく、MGよりも設定に忠実です。頭上からの衝撃には、こっちの方が強いかも?ボディは前後分割でウエストも可動しませんが、肩が前後に可動。まぁ、ケーブルが有るので、あまり動きませんけどね。フンドシが後ハメ可能になっているのには、ちょっと驚きました。スカートはサイドスカートのみ可動。ここもジョイントパーツだけハサミ込んでおく事が可能なので、後ハメ可能みたいな物ですね。



 モモには可動目的のフレームが入っています。ボールジョイントが無いため2箇所で可動させている事と、パイプの多いデザインゆえの例外なんでしょうけど、MGにフレームが入っていない事を考えると、なんだか面白いですね。モモ前面のラインは、スジ彫りではなくスキマで表現されていて、組みにくさは感じるものの興味深い部分です。腕は、動力パイプのスジ彫りが自然で良い感じ。(MGは斜めになった部分が有りますよね。)肩のスパイクアーマーは、スパイクが別パーツ化され、ちゃんと斜めに配置されてます。手首関節はスイング出来るんですが、ポリキャップ隠しのカバーが付いてます。指は5本全部が可動!遊んでいるうちに緩くなりそうで心配ですが、これからはMGで遊びまくれば良い訳です。これでもかと新ギミックを投入し続けた時代の空気を楽しんで組むのが吉。外観もリアルですよ。バックパックはMGとほぼ同等の可動が楽しめます。



 足首は、軸関節の組み合わせでボールジョイントと同等の可動。足裏が土踏まずの部分で割れて可動するのもMGには無い魅力です。ここだけ移植したい人も多いのでは?武装は、ザクマシンガン改とヒートホーク、シールドが付属。1/48ジェリド中尉が付いているのも魅力ですね。正直、MG付属のフィギュアはMSと同スケールで比較対象には良いんですが、パイロットスーツ姿ばかりで誰が誰だか分かりにくいのが難点です。1/20ほどメーカーの負担にならずに毎回付属させられて、キャラクターの見分けが(ギリギリ)可能な、適度なサイズと言えるかも。

 少ないパーツで構成を簡素化するノウハウが確立されていない時期のキットのため、部分的には複雑な部分もあり、やや上級者向けの印象でした。組み易さが優先される流れの中では、それが新鮮で楽しくもある訳で、ぜひ一度組んでみて欲しいキットですね。無塗装や部分塗装で仕組みだけ楽しむのも良いですが、パイプ類の素材の統一観などMGに無い良さもあるので、丁寧に仕上げる価値も有るキットだと思いますよ。

2004.8.30  健 竹史

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