健さんの
プラモコラム

その111
 HGUC ガンダムNT−1の巻

(1/144 HGUC ガンダムNT−1 /バンダイ/
RX−78−NT−1”アレックス”
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場)



 3度目のキット化となるアレックス、今回のパッケージイラストは新鮮でしたね。旧1/144ではアーマー無し、MGではアーマー装備。今回は、そのどちらでも無いアーマー排除のシーンです。前2作とダブっておらず、両形態をユーザーに伝える、なかなか上手いアイデアじゃないでしょうか。

 劇中では破壊されたから捨ぎ捨てた、という受け身な感じでしたが、今回は攻撃に移る劇的な一瞬という趣きで、かなりアクティブ。アムロが使ってたら、こんなシーンも有ったかな?正直、アレックスのイメージが変わりましたね。誰です?北斗の拳みたいだなんて言ってるのは。いや、ボクも「歳末救世主伝説」なんて言葉が脳裏をかすめましたけどね。では、箱の話はこの辺にして、中身の話に移りましょうか。



 頭部は、マスクが別パーツで、アゴとアンテナ、額を色分けしてあるスタンダードな構成。旧1/144キットと比べると、ずいぶん優しい顔に見えます。旧1/144はアゴと額のセンサーが大きくて、骨っぽい(男っぽい?)印象。こっちの方が設定には似てる気がしますが、パイロットが女性と判明した今では、優しい顔の方が似合ってる感じ。ヘルメット下端とアゴの位置関係を比べると、旧1/144、MG、HGUCと、キット化される度に小顔に(または小顔に見える様に)変わってきているのが分かります。

 ボディは、ウエストパーツの表面に球体コクピットをモールド。胸パーツを組み付けると隠れて見えなくなってしまうんですが、赤いハッチパーツの裏側が筒抜けなので、ハッチを開いた状態にも簡単に改造出来ます。ウエストは、グレーの部分が腰の白い部分(厳密には、ここもウエストでしょう)と噛み合う形になっているので、スイングさせる時には引き出してやります。左右だけでなく、前後にもスイング可能。引き出したスキマには、ギアの様なモールドが施してあり、スカスカな印象はありません。

 は、エンブレム周辺の色分けが行われなかったのが少々残念。でもフンドシパーツを見ると、色分けのために分割を増やす様なスペースの余裕は無さそうで、止むを得ない感じです。フロントスカートの可動軸の細さも、フンドシ内部のスペースの狭さを物語っていますね。フンドシ側面のスラスターは、別パーツで再現。フンドシ下のスラスターは、残念ながら分割ラインが通って真っ二つ。下から差し込む、別パーツになってたら嬉しかったですね。



 です。モモはRX−78等とは異なる、丸みのあるストレートな形状。MGアレックスも近いラインをしていますが、旧1/144キットでは微妙にカーブしてますね。設定画ではスカートに隠れて分かりにくいんですが、ジムコマンドと同様、モモはカーブしているのが正解なんじゃないでしょうか?全く同じ形状でも良かった気がします。ついでにヒザ関節のフチ取りが、アレックスではモモ側、ジムコマンドでは関節側として作られて、不揃いになっているんですね。フチ取り部分が、OVA当時の色指定で寒冷地ジムだけメカ色に、ジムコマンドやアレックスでは本体色に指定されたのが混乱の元になってる気がします。MGで出るなら統一されるかな?

 ヒザメカ部は、元デザインでもカトキさんの画稿でもジムコマンドと共通なんですが、どちらも独自のアレンジを加えてあり、不揃いとなっています。アレックスの方は、ラインを段差で表現した様にも見えますね。設定重視の人は、パテを盛って修正してやると良いかも。良く曲がるヒザなので、ちょっとくらい可動範囲が狭くなっても、十分遊べます。

 スネは、プロペラントブロック(青い部分)とスラスター(側面と後部)を色分け。ヒザの赤い部分はシールで対応しています。前後左右に分割されたパーツ構成で、どこにも接着ラインが出ないのが嬉しいですね。足首メカ部は二重関節で、細かいディテールが施されています。ガンダムタイプではシリンダーの表現が入る事が多い部分ですが、今回はフレーム表現と言っていいでしょう。

ウエストには全周囲モニターの球体コクピットを再現。ハッチが別パーツなので、簡単な加工で開いた状態に改造出来そうです。(ようやくアッガイに追いついたか・・・:笑)
腕は、差し替えながら精密感のあるガトリング、完全収納を実現したチョバムアーマーと、見所がいっぱい。MGではアーマー形状を新解釈でアレンジしてあるので、設定通りのデザインで完全収納出来るのは、このキットが初めて。
足首は関節パーツだけでなく、軸受け周辺にもディテールが入っています。(見えにくくてスミマセン。)ここも塗り分けてやると良いでしょう。

 足首は、土踏まずの有無という違いは有るものの、HGジムコマンドと同様の足裏パターンが施されています。(元デザインでは、ジムコマンドにも土踏まずは有るんですけどね。)ジムコマンドの設定を基本に、若干のディテールを追加したパターンとなっています。足首アーマーに隠れる、軸受け周辺にもメカっぽい表現が入っていて、なかなか芸コマ。MGよりも精密感がありますね。設定では足首アーマーの正面にディテールが有るんですが、成形方向の都合で省略されてます。気になる人は彫ってやると良いでしょう。

 バックパックは、本体、左右側面、バーニアの5パーツ構成。アレンジが加えられていない分、MGよりも設定に忠実なディテールです。サーベルホルダーには若干のガタつきがあるので、サーベルを抜くポーズを取らせたい時には角度を調節する事が出来ますよ。

 肩アーマーは、前・後・側面とフックの3パーツ構成。肩ブロックをサンドして組立てる様に指示されていますが、腕と別々に作っておいてから組み合わせる事も可能です。前と後ろでディテールが異なっているので、間違わないよう注意しましょう。実は前後の違いをキチンと再現したキットは、今回が初めてだったりします。正面外側のスリット内にもディテールが入ってますが、これは上半身アップの画稿で確認できます。MG以上に再現度は高いですよ。

 です。肩ブロックは布かラバーと思われる、関節カバーのシワをモールドした球で表現。肩アーマーの側面が開放になっていないデザインなので、真横まで腕を上げる事は出来ません。ヒジ関節パーツは、いつも通りの構成のため設定通りの形とはいきませんが、普段よりも柔らかいラインで構成、スジ彫りの代りに、途中に段差を入れてあります。



 前腕のガトリング砲は、一旦カバーを外してから取付ける方式です。旧1/144も同様のギミッックでしたが、カバー展開用のアームをハッキリと再現した事でメカニックの重なりが生まれて、格段にそれらしくなった気がします。カバー裏につながる配線(?)までしっかりと再現。サイズの都合で前腕が下がる表現は省略され、発射形態の位置関係はMGの方が正しい様です。それにしても、カバー部分を除くと腕の太さは普段の半分程度。関節を仕込むのも大変だったと思います。手首の軸受けなんか、カバー側に露出してますし。

 手首は、左右のゲンコツ武器持ち用の右手が付属します。ジムコマンド等と同じサイズの手首なんですが、腕が細く見える(カバーまで含めれば細くはないんですが)デザインのため、目が慣れるまではゲンコツが大きめに感じました。気になる人は、HGUCガンダムの物が若干小さいので、流用してみても良いでしょう。

 武装です。ビームライフルは左右分割と銃口の3パーツ構成。旧1/144に比べて、サイズはかなり小さくなりました。どちらが劇中のイメージに近いんだろう?と一瞬思いましたが、未登場の武器(って言うか、プラモ用にデザインされた物)なんですよね。

旧1/144キット(右)との比較。ずいぶんスリムになりました。

 シールドもプラモ用にデザインされた物。こちらは旧キットと同等のサイズですが、ずいぶん上寄りに装備する様になりました。顔までカバー出来る高さのため、大きなシールドがますます大きく見えます。グリップを握らせ、ヒジをロックして持たせます。裏面にもメカニックが詰まってますが、マガジン等ではない様子。旧1/144では腕カバーとの干渉を避けるため、穴が開いてたりしたもんですが、ずいぶんカッコ良くなりました。

 サーベルは、背中に装備する物が2本と、発光状態の物が1本付属。手首と一体になった物ではなく、いずれもサーベル単品のパーツです。背中の物には、お約束の「謎の穴」が開いてます。



 お楽しみのチョバムアーマーです。ボディアーマーは、ワキの下までカバーするため、肩関節を引き出して装着。ワンパーツですが、胸部ダクトハッチのカバー部分は、まるで別パーツの様なシャープな造形です。増設フロントスカートは、本体のスカートに噛み合わせる様に装着。左右一体で可動させる事が出来ます。可動範囲はわずかですが、カタパルトでの発進ポーズ程度には、十分に対応可能です。リアスカートは、腰後部の穴(ポリキャップ内蔵)を使って装着。この穴は設定にも有る物で、本当にチョバムアーマー用のハードポイントなんでしょうね。

「アムロ、行きま〜す!」歴史の流れによっては、見る事が出来たかも知れないポーズです。ビームライフルは持てましたが、シールドは持たせる事が出来ませんでした。残念。

 肩アーマーはワンパーツ成形。本体肩上のフックを利用して、横から被せる様に装着します。腕アーマーは、旧1/144キットではガトリングカバーを取り外して装着する方式でしたが、今回はそのまま被せる事が可能になりました。分割ラインは中央を避けてあり、目立ちにくくなったのも嬉しいですね。スネアーマーは本体と同様、前後左右に上手く分割。分割方法はMGとは若干異なります。前側には余分なラインが出ますが、見苦しさは有りません。後側は露出したスラスターとの密着感が若干損なわれた代りに、ヒザ下のフチのシャープさが増しています。背部アーマーは、後面と側面の3分割。MGに近い仕組みですが、バーニアを全周囲ってあり、より設定に忠実になりました。



 それから、設定画にマーキングが描き込まれているため、多数のシールが付属します。今では4号機が別に存在する訳ですが、「4」と記したマークも付属。設定通りの「U.N.T SPACY」と記したシールの他に、最近良く使われる「E.F.S.F」のシールも付属。(言いたい事は、どちらも地球連邦宇宙軍という事なんでしょうけど。)当時の設定と最新の設定(?)から、好みで選択して作れる様になっています。(余談ですが、「ジオン公国」も「ZION DUKEDOM」から「PRINCIPARITY OF ZEON」に変わってきていますね。)

 組立時間は1時間20分でした。MGは元デザインのプロポーションのクセ(脚が長めと言うか、胴が詰まった感じ)を消し、平均的なガンダム体形に近づけた印象でしたが、今回は元デザインの足長体形に、ちょっと戻した印象です。ディテールについても、適度に簡略化する方向でアレンジしてあったMGに対し、元デザインにある物を可能な限り盛り込もうとしてある様です。てな訳でMGよりも元デザインに近く、精密感も優れていると言えそうです。


もう一度、旧1/144キット(右)との比較。HGUCはアーマーを着込んでもカッコイイ印象。旧1/144は重くて窮屈そうに見えますが、「チョバムアーマーとは、本来そう言う物」だと考えると、捨てがたい魅力が有ります。顔の両脇のブロックが、肩アーマー上面よりも高くなっていて、設定に近いですね。MGでは、同じ高さくらいです。HGUCのボディアーマーは着心地が良さそうですが、この辺りを改造してやると、威圧感が増すかも知れません。

 それでいて旧1/144には無かったスマートさも獲得。チョバムアーマーを付けても外してもカッッコイイですね。(チョバムアーマーを着込んだHGUCと、着込んでいない旧1/144キットが、同程度のボリュームなので驚きました。)精密感を求める人にも、プレイバリューを重視する人にも、オススメのキットですよ。



おまけ

 ジンハイマニューバ(高機動型ジン)を軽く紹介しておきましょう。キットはHGジンのバリエーションで、Aランナーを、まるまる差し替えた内容となっています。頭部は、ほほガードの新設、トサカ(センサー)の大型化等で、より凄味のある「上位機」らしい面構えに変更。ノーマルジンのフェイスと側頭部を、新規パーツと上手く組み合わせています。ボディは、ジンの肩上パーツの取付け穴を使って、胸板パーツを増設。ワンパーツ追加しただけですが、エリやハッチが二重になり、パーツの重なりが生まれる効果的なデザインだと思います。



 腰は、フロントスカートの色分け部分を利用してスラスターを増設。サイドスカートとリアスカートはそのままです。脚は、足の甲パーツが新規になり、前面にスラスターのあるデザインになりました。スネ側面にはスラスターを増設。SEED本編では珍しい丸バーニアを配置して、MS−06Rを連想させるデザインとなっています。外側のカバーは、ノーマルジンの小さいウイングをそのまま使用。上部の丸ノズルとフィットしてるので、買って組むまで気付きませんでした。気付けば説得力が増す訳ですが、何よりパーツから連想してデザインした様な、模型的な遊び心がナイスです。



 増設スラスターとスネの接続には、ミサイルポッド用のハードポイントを利用。これも説得力のある処理ですね。って言うか、F91シリーズでもハードポイントを活かした増設ユニットのデザインは多く起こされたと記憶していますが、当時はキャストパーツの発売のみ。あの装備運用が、プラキットで普通に展開されてるって事が嬉しいです。

 ウイングは、後方にはね上げる突撃向きのデザイン。配置でシグーへの発展(あるいはフィードバック?)を匂わせつつ、ディテールはミーティアのエンジンとの関連性を想像させる手法が見事。開発史に興味が湧くし、関連の機体と並べてみたくなりますよね。エンジンパーツは新規でも、ウイング本体はノーマルジンの物をそのまま使ってあります。



 肩に増設されたスラスターは、肩アーマーの厚みをクリップの様にはさむ取付け。面白い構成ですが、肩アーマー表面にゲートの切り残しが有ると、パーツが破損しやすくなると思います。ナイフで丁寧に仕上げてから組み付けると良いでしょう。武装は、JDP2−MMX22試作27mm機甲突撃銃と重斬刀が付属。重斬刀はノーマルジンと同じ物ですが、銃と組み合わせて銃剣として使う事も出来るので、遊びの幅が広がりました。細かい所では、ヒジとヒザの関節のデザインが新しくなりました。向上した旋回モーメントを受け止めるために、関節が強化されているのだそうです。こんな設定も気分を盛り上げてくれますし、差替えとなるランナーのパーツを、どんどん新デザインにしてやろうという意欲的な開発姿勢も面白いですね。

 組立時間は1時間5分でした。ザフトのマークと「ドクター」ミハイル・コーストのパーソナルマーク、機体ナンバー(1〜3)のシールが付属します。デザインがカッコイイのはもちろんですが、MSV展開にあたってのデザイン、パーツ構成、設定の手法や方向性が伝わってくる、とても面白いキットだと感じました。


2004.7.10 健 竹史

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 vol.1
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 vol.2

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