健さんの
プラモコラム

その104
 HGUC ゲルググイェーガーの巻

(1/144 HGUC ゲルググイェーガー /バンダイ/
MS−14JG ゲルググイェーガー
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場)



 0083当時1/144イェーガーを改造してマリーネを作り、HGUCマリーネが発売されたら、それを改造してイェーガーを作り、HGUCイェーガーが発売されたら、またそれを改造してマリーネを・・・作ってる人、けっこう多いんじゃないでしょうか?「何年か待てば、アレもコレもキット化されるかもよ」なんていう、恵まれた時代になりました。改造で自作しなくても、ボクの前にはイェーガーもマリーネも揃ってる訳ですが、熱心に改造してた人達には、だいぶ腕に差をつけられてしまったかな・・・?日本のモデラーはゲルググファミリーに鍛えられた!のかどうかは置いといて、キットを見ていきましょうか。



 頭部は、旧1/144キットやマリーネと比べて、ずいぶん小さくなりました。マリーネと並べるためにも、同じサイズにして欲しかった気持ちもありますが、設定の正面画で見ると、確かにエリと頭の幅が同じくらい。キットの頭部は元デザインに忠実なサイズと言えそうです。モノアイは裏からクリアパーツをハメる構成。クチバシが別パーツなのはマリーネと同様ですが、今回はオデコも別パーツ。目の塗装(シールを貼る場合も)が簡単なので、ガンダム系に限らず、どんどん採用して欲しい分割です。

 ボディは、ウエストを胸パーツでサンドする構成。丸いコクピットハッチは、ウエストの一部が露出する形で再現されています。エリは後ハメが可能。ボディと一体成形だった旧キットと比べて、内部のパイプ等の質感が格段にアップしています。ウエストは、残念ながら360度の回転は無し。マリーネと同等の回転は出来るので、十分ですけどね。

 です。フロントスカート左右独立して可動。いつもなら左右一体の部分ですが、加工しなくても自在に動くというのは、やはり嬉しいですね。サイドスカートも可動します。リアスカートは、左右と下端のスラスターが別パーツ。下端のスラスターの裏は、スカート内部に出っ張りとして現れてしまいますが、ここはメカっぽく処理されていて、マリーネよりも一歩進んだ表現と言えそうです。いっそ、裏側のメカごと、スカート内部から取り付ける構成にしても良かったかも。



 フンドシは、センターアーマー(フンドシ前面)との境目に段差が有ったり、後部にダクト風のディテールが入っていたりして、ここもマリーネよりもメカっぽさが増している感じです。スカート内のスラスターは5基。焼きギョウザの様に連結してあったマリーネの物は、あまりリアルとは言えませんでしたが、今回は基部のデザインを、一体でもおかしくないデザインに改めてあり、「見えた時に不自然ではない」どころか、見せ場の一つになってますね。ノズルを少し放射状に配置して欲しかった・・・なんて言うのはゼータクかな?

 はマリーネと共通性の高いデザインですが、ボリュームが大きく変更されました。モモが小さく、スネが大きく、足首がずいぶん大きくなりました。足首は縦長のデザインなので、幅をマリーネに合わせた結果かも知れませんけどね。いや、足裏幅を最初に決定して、それに見合ったスネを設計したら、こんなプロポーションになったのかも?

HGUCゲルググマリーネ(左)との比較。賢明な読者にはお分かりの通り、このキットにマリーネは付いていません。

 モモは、正面のラインはマリーネではエッと解釈されましたが、今回はスジ彫りとしてあります。股関節周辺のメカニックが露出している様な表現は、今回は無し。むしろヒザ関節周辺の装甲厚(穴のフチ)の様な、見える部分を丁寧に作ってある感じですね。

 ヒザ裏の装甲は、マリーネよりも切り欠きが小さくなりましたが、同じ程度に可動します。元のデザインには(カトキさんのリファインでも)切り欠きは有りません。マリーネはヒザの二重関節の、下側で主に可動するため、切り欠きを埋めると動かなくなりそうですが、イェーガーではヒザ上の関節が良く動くのに加え、ヒザ後部のスキが大きく取ってあるため、切り欠きを埋めても、それなりに可動してくれそうです。外観重視の人は、改造してやっても良いでしょう。

 スネ内部のスラスターは、旧キットやマリーネでは3基のサイズが統一されていませんでしたが、今回は同じサイズの物が並んだデザインとなっています。ディテールも、かなり細かいですね。3基のサイズを揃える事が出来たのは、マリーネの時とは取付け方法を変えてあるからでしょうか。スラスターに対して、取付用ポリキャップが後ろに配置されたため、ポリキャップを固定する軸受けがコンパクトで済み、両端の2基を小さくしなくても配置出来る様になったみたいです。スソの中をのぞき込んでも軸受け等の構造物が目立たず、よりリアルになった印象です。

スネ内部構造の比較。スラスター取り付け用のポリキャップが、イェーガー(左)では後ろに、マリーネ(右)では前に配置されています。

マリーネはスネ後部表面にもスラスターが有るデザインのため制約が有ったのかも知れませんが、イェーガーの方が内部スペースが広く取れ、ポリキャップや軸受けも見えない、優れた構成だと思います。

スカート内のスラスターも同様の構成で、イェーガーの方が見栄えが良くなっています。

 足首は、いつもの縦に積み重ねていく構成ですが、足の甲とクツのピンク部分は、ワンパーツで成形されています。下から茶色パーツと足裏パーツ、上にグレーのパーツを取り付けていきます。カカトも別パーツですね。足裏は、設定にあるディテールは一通り再現してありますが、ツマ先やカカトのツメが可動しそうな雰囲気は、今一つという印象。色分けの都合で、フチをプラの厚みが一周する分、分割線を配置しにくかったのかな?カカトが別ブロックになってる表現だけでも、欲しかった所です。

 肩アーマーは、マリーネの時は肩の取付け軸に上から差し込むタイプでしたが、今回は腕より先に、横から差し込むタイプになりました。肩アーマーの横が開放になっていないデザインなので、腕の取付けが若干難しくなりましたが、ワキの下にミゾを切り欠く必要が無いため、見栄えは良くなりました。側面のスラスターは、マリーネの物と形が近いので、ちょっと加工すれば交換(要接着)出来そうです。フィンの有無に好みが有れば、流用してみるのも面白いかも。(最初から規格を完全に統一して有ればなぁ・・・)

イェーガーのパーツを流用してマリーネを作ってみると、こんな感じ。無改造でここまでミックスする事が出来ます。足首は取付け軸が短いので、改造しないと接続出来ません。腕にハードポイントが欲しい場合は、マリーネの速射砲ユニット(前腕横のユニット)を接着してやると良いでしょう。前腕との間に、若干スキマが出来ますが、かなり近いラインをしているので、小さな修正でフィットしそうです。スネは目立った特徴だけ改造して、微妙な部分は妥協した方が良いかも・・・。

 です。上腕は毎度の筒構造ですが、ヒジが球体なので引っ掛かる所が無く、グルグル回ってしまいます。上腕の向きには指定が有るので、注意しましょう。ヒジ関節は、球体を右、左、中央に分割して、回転する中央を左右からサンドする構成。マリーネの時には球体の再現をあきらめて、ポリキャップカバー式にアレンジしてありましたが、念願かなって、見事に再現です。上腕アーマーのヒジ周辺が、どうしてあんな形に変化しているのかと思ったら、球体に密着してたからなんですね。今回初めて、上腕の形にも説得力が出た訳です。

 前腕は、ビームスポットガンを別パーツで再現。甲の部分にハードポイントは有りませんが、基本的にマリーネと同じデザインと思って良い・・・のかな?(注:マリーネも、右腕にはハードポイントが無いのが正解らしいです。)ヒジ関節は、組立の時にハサミ込んでおく必要があります。

 手首は、武器持ち用の右手、穴開きゲンコツの左手、ビームマシンガンに添える左手が付属します。マシンガンに添える手は、成形方向に親指の向きを合わせてあるので、ポーズがちょっと妙な感じ。クッキリ成形するための判断でしょうけど、ちょっとくらいシャープさに欠けても、自然な表情の方が良かったかも?いや、狙撃ポーズで安定して飾るためには、親指はしっかり立てておかないといけなかったのかな。



 バックパックは、色んな方向にスラスターが付いているデザイン。どこを触ってもスラスターに触ってしまうので、接着しておいた方が安心でしょう。側面は別パーツ化して、ディテールをクッキリ再現。プロペラントタンクは、緩やかな曲面を上手く再現。直線的だった旧キットとは、かなり印象が変わりました。プロペラントタンクの付け根を補強しすぎたのか(必要な事ですが)、スラスターに若干被ってしまっています。これは引火しそうでヤバいかも。気になる人は改造して、タンクを下に下げてやると良いでしょう。(アルミ等、柔らかい金属線でつないでやると、取付け角度を曲げて修正出来ますよ。)

 武装は、ビームマシンガンが付属します。旧キットに比べて、全長が若干長く、スコープがかなり大きくなりました。スコープのセンサー部分とマズル(銃口)は別パーツ。バイポットは本体と一体成形になっています。

 ところでこのビームマシンガン、今回のキットでは左右共通のディテールになっていますが、旧キットやMG量産型ゲルググに付属する物では、左右の面でかなりディテールが違っています。最近の資料本には片面の設定画しか載せられなくなっていますが、作品当時の本(Bクラブ38号、ガンダムウェポンズUC0080等)には、両面の設定画が収録されていて、これまでのキットでは資料として採用されて来た様です。例えば、バレルジャケットに開けられた長穴は、左は2つ、右では5つとなっています。

MG量産型ゲルググ付属のビームマシンガン(大)と、HGUCイェーガー付属のビームマシンガンの比較。右側面の本来のデザインは、一番上の写真の通りです。ディテールは少なめですが、表現のリアルさではHGUCの方が上じゃないでしょうか。

 で、実際の火器に左右非対称の実例はあるのか、詳しい友人に聞いてみたところ、MG42という機関銃を例にとって教えてくれました。その銃はバレルジャケット側面の穴が、右側だけ長い1つの穴になっていて、その穴からバレル(銃身)の交換を行えるのだそうです。

 今回のキット化にあたって、「バレル交換用に使えない穴なら、左右非対称にする意味はあまり無さそうだ」という打ち合わせが有ったのかも知れません。あるいは、「右側の画稿は、没稿が誤って掲載されたもの」とかね。エルガイム直撃世代にとっては、こういうの、たまらないんですよ。(放映当時、バスターランチャーで似た様な事が有りまして、TVにまで登場、後にキットも発売されました。)左右共通になった経緯は想像するしか有りませんが、元設定重視の方は、改造してやる必要が有りそうです。

 組立時間は、1時間5分でした。HGUCマリーネとプロポーションが大きく異なるので、並べて楽しみにくいのが難点ですが、並べて比べたいくらいに進歩したキットです。いったいどうすれば良いのやら(笑)。足首が大きい点が気になりますが、見上げたり、見下ろしたりする角度からだと、正面から見た時ほど気にならない様にも思えます。足首を頑張って小型化するのも良いですが、飛行ポーズなど、足首の大きさを利用して遠近感を出す様な飾り方をしても良いんじゃないでしょうか。



 部隊マークと機体ナンバーのシールが付属し、設定画にある機体を再現する事が出来ます。それから、説明書の解説も、どんどん「狙撃用」でなくなってるのが面白いですね。ライフルは連射と単発(狙撃)の切替え式指揮官機として開発された等、劇中での活躍や「マシンガンで狙撃しなくても・・・」といった長年の疑問を意識した様な内容になっています。

 高機動ランドセルに長時間作戦用の増設タンク。狙撃兵らしからぬデザインは、当初ゲルググB(高機動型)としてデザインされたための様です。(Bクラブ38号では、B型と紹介されてます。)そんな話を友人にしたら、「いっそズゴックみたいに、ゲルググE(エクスペリメント)って呼べば良かったのに。」と言われました。確かに(通常)、(高機動)、(キャノン)(砂漠)(マリーネ:海兵)の間に収まってキレイですし。ん?マリーネをF型と呼んだのは、イェーガーをE型扱いしての事だったりして?(考え過ぎ!)



おまけ

 比較用に、旧1/144ゲルググイェーガーも組んでみました。発売当時に組立途中で放棄され、今回やっと続きを組みました。ビデオを見れなかった当時の自分の環境では、パチ組みする意欲も湧かなかったって事で。(だからOVAや有料放送じゃなく、地上波での放送が大事なんですよ、ウン。)



 ウエストが締まっていないプロポーション、可動の都合で余計な方向にもエグられたヒジ関節など、あまりカッコ良い印象になっていませんが、頭や足首のサイズはHGUCマリーネに近く、丁寧に塗装してやればマリーネと並べて違和感の無い物になりそうです。HGUCはマリーネと並べる事よりも、元デザインのプロポーション再現を目指してる様ですね。旧キットの説明書に収録された、本来の設定画の頭の小ささ、足首のデカさが、HGUCイェーガーそのままなので、かえって驚いてしまいました。



 HGUCの方がカッコイイのはもちろんですが、リアスカート側面(スソ)のラインがエグれずに垂れていく様子や、スカート後部が、あまり絶壁にならずに後ろに伸び続ける感じなど、HGUCよりも「イェーガーらしい」形状になっている部分もあり、面白いです。流用すると言うより、改造の参考にしてみるのも良さそうです。

 足裏は、ツマ先やカカトが動きそうな感じがHGUCよりも良く出ています。(ツマ先の裏は肉抜きディテールですけどね。)ビームマシンガン右側面のディテールが、本来のデザインに忠実なのも良いですね。HGUCの手首にもフィットするので、好みで持たせても良いでしょう。


2004.4.20 健 竹史

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