健さんの その265 MG ザクキャノンの巻 MG 1/100 毎回ボックスアート(パッケージイラスト)で往年のファンを楽しませてくれる2.0仕様ザクバリエーションですが、今回は期待以上に素晴らしいものでしたね。上空のフライマンタ部隊を地上から砲撃する「航空機迎撃用ザク」のイメージを色濃く反映した1/144のパッケージイラストから25年。その続きのシーンとして、降下してきたジム&ジムキャノンの部隊との、対MS戦に突入してるじゃないですか!まさに当時から説明書で解説されていた「ガンキャノンの出現によって使用目的を変更された」姿そのものですよ。 しかもジムの投下に使われているのがガンペリー、地上には歩兵の姿も!もう「EXモデルもUCハードグラフもまとめて買っちゃう!」てな具合に熱くなった人も少なくないのでは?では、ぼちぼち中身の話に移るとしましょう。 頭部は、フレーム・外装とも新規パーツですが、首の左右スイングにモノアイが連動するギミックは引き継がれています。モノアイが全周可動するデザインですが、ギミックの機構は量産型ザクと同じなので、後頭部までモノアイが回らないのは残念ですが。クチバシのダクトは内部フレームに取り付け。このデザイン、ゲルググキャノンとの関連性を感じさせますね。 外装は、モノアイシールドの下で上下分割。支柱が多いので、破損しないよう持ち方に気を付けましょう。チョンマゲは別パーツ化。前後のカメラ部分(ラビットタイプは前のみ)にはクリアーパーツを使用してあります。2種類用意されたアンテナは、完成後もチョンマゲごと交換が可能です。細く破損しやすいので、100円ショップのケース等に入れて保管すると良いでしょう。
ボディです。肩関節の引き出しやパイロットシートの左右スライドギミックはJ型と同等ですが、ハッチの開き方が異なるため、胸フレームは新規パーツとなっています。胸板の上半分は、中央の支柱のスリットにハメ込んであり上にスライド。下半分は、胸ダクトの隔壁で左右から押さえてあり、上に引き出してから前に開きます。
胸板が全開するため、シートが左右に動かなくても乗り降り出来そうなんですが、本当は右側にコンソールパネルが有って、左から乗り降りする必要が有るのでしょう。手を加えたい人は工夫してコンソールパネルを自作するも良し、固定シートと解釈して左側のスペースに牛を乗せるも良し、ですね。(良くないって!) 動力パイプはウエストではなく、胸正面に接続。接続ユニットは内部メカと赤い外装の二重構造で、外装を外してもパイプを接続出来る様になっています。 J型・R型等とパイプの配置が大きく異なるため、パイプカバーをズラしてセットする専用ランナーは使われていません。1パーツずつ成形されたパイプカバーを切り出してポリ製の芯に通す、Ver.1.0に近い構成ですが、パイプカバーは取付順通りにランナーに配置され、直線部用・カーブ用を混同しにくくなっています。しかも穴は真円でなく周り止めが付いていて、簡単にポジションが決まります。キツくて通しにくいですが、これは抜けにくい・ズレにくいという事でもあります。 パイプカバーのランナーには、ナンバーの付いていない棒状のパーツが4つ含まれています。これをランナーに付いたままのパイプカバーに串の様に通してから切り離せば、紛失する事や順番を間違える事が有りません。廻り止めも付いているので向きを揃えたまま取り扱え、ゲート処理やペーパーがけも一度に出来ます。つまり一種の治具ですね。使い終わったら色を塗ってビームサーベルに・・・ではなく、保管しておきましょう。ナンバーが無いという事は、部品注文出来ないという事ですし。逆に、パイプカバーは単品で部品注文出来るようになり、紛失時の負担が軽減しました。
ウエストは、J型と同じフレームを内蔵。外装は箱形にワンパーツ成形されていて下から被せ、正面の黒い部分は前からハメ込みます。 腰もJ型と同じフレームを使用。フロントスカートは左右独立して可動。サイドスカートよりも長く、現在のスカート分割の解釈を先取りしている様で面白いデザインですね。いや、本当は当時から答えが出してあったのかな?上部は可動式の腹部アーマーと噛み合う形に切り欠いてあり、ボールジョイントの根元の強度が若干弱くなっている様に思います。ハメ込む時にはボールの真裏を押して、パーツに負担をかけない様にすると良いでしょう。 サイドスカートはJ型とほぼ同形。もっと角ばった印象が有る様に思いましたが、J型の裏面パーツを流用する都合でしょうか?胸やスネが角ばったデザインなので、エッジを強調すると統一感が出たかも知れませんが、腹部パイプの密着感を考えると、これも悪くない気がします。それに、近年のガンダムの様にコーナーでスカートを分割するならともかく、コの字のアーマーの折れ曲がりが急角度だと、角ばったモモが引っかかりそうな気もしますから、他のバリエーション機以上に、丸みのあるスカートが適しているのかも知れません。 リアスカートもJ型とほぼ同形。裏面パーツも共用で、バズーカラックも同じ物を装備しています。但し、ランドセル下にビッグガンのマウント部が垂れ下がっているので、そのままではバズーカをマウントする事は出来ません。スカートを引き下ろして(一旦外して着け直すと良いでしょう)やれば可能となります。 脚です。モモは、フレームの芯になるパーツをJ型と共用、それを囲む内部パーツは、後部が若干異なる様です。もっと大幅に変更されるかと思っていたので意外でした。外装は前後分割。ガンダム等に近い直線的なデザインですが、今回は従来よりもザクらしさを強調し、真ん中にふくらみを持たせた造形となっています。 ヒザは二重関節。側面の丸モールドはJ型よりも大型化していますが、貼り付ける丸パーツが大きくなっただけで、関節パーツは従来と同じ物です。ヒザアーマーは、新規の大型アーマーの中にJ型のヒザアーマーが隠れている二重構造。ヒザを曲げると、連動してJ型のアーマーがせり出してきます。MGガンキャノンのギミックを連想させますね。大型アーマーを外した状態でも、J型のアーマーとスネが一体に見える様にデザインされています。 スネは、MGザクVer.2.0と共通の芯パーツを内部メカパーツで覆っていく構成。赤い部分はグフと同じ補助推進装置です。基本的にザクベースですが、グフの機構も採り入れてあるデザインなんですね。造形が放熱ダクトっぽいですが、一段引っ込んだ造りになっていても良かったかも。後部下側の外装は簡単に外せるので、完成後も内部メカを手軽に見る事が出来ます。 動力パイプは、J型等と同様、コイルスプリングにパイプカバーを通してあります。 足首は、足裏にバーニアの無いJ型のフレームパーツを流用。ツマ先やシリンダーの可動も、そのまま引き継いでいます。ただし外装パーツは大型化してあり、特に横幅が広くなっています。MGグフVer.2.0が出るとしたら、このくらいのボリュームになるんでしょうか?
クツは旧キットの様に角張らせず、J型等と同程度の丸みのあるデザインとしてあります。正面左右のクボミはスラスターかダクトでしょうか?クツをワンパーツ成形するため、クボミ部分にはスライド金型を使ってあります。 左肩のアーマーは、J型と同様、L字形のジョイントで接続。ワンパーツ成形のトラスフレームに外装を被せ、スパイクを取り付ける構造も同じです。外装からトラスフレームが少しハミ出しているのが面白いですね。量産型よりもコンパクト化してある事をアピールする狙いでしょうか? 右肩のシールドは、本体色・赤・ 本体色の3枚を重ねる事で、赤いフチ取りのラインを色分け。ボクが買った物は少しパーツが反っていたので密着せず、「ここまで色分けしなくてもデカールで良いのでは?」と思いましたが、旧1/100キットを組んで考えが変わりました。旧キットではこのラインをスジ彫りで表現していたため、側面ではスジがシャープに成形出来ていなかったんですね。厚み方向でパーツ分割すれば成形の制約が無くなり、クッキリ仕上がるという訳です。厚みの表現も可能になりますしね。万一パーツに反りが有っても、それは接着すれば解決する事ですし。
シールドを保持するアームは、L字形ではなく、直線的な物に変更されました。左肩のアーマーは従来のL字アームで、今回は左右不揃いとなっています。互換性や整備性の点では左右のアームが共通化してある方が便利だと思いますが、ザクキャノンの場合は右肩には必ずシールドを装備するという事で、不便も無いのでしょう。説明書では、180mmキャノンが右の視界を遮る配置となっているため、右側にシールドを配置してあると解説されています。量産型より面積が大きい事も、これで説明が付きますね。 腕です。肩ブロックと上腕はJ型と共通。ヒジは、関節を曲げるとヒジアーマーがスライドする従来のギミックを活かし、前腕内部からヒジフレームがせり出してくるギミックを仕込んであります。ヒザのギミックに似ていますがヒジアーマーは無く、せり出すフレームは、ヒジアーマー取付用の突起の無い新規パーツに変更されています。
前腕は、外装を前後分割、ヒジ横に丸パーツを貼り付ける構成になっています。袖の穴はサイズに余裕を持たせてあり、手首付近が可動するギミックは、外からは見えませんが引き継がれています。スネ同様、ここもグフに近い形をしているんですね。 手首は、左右ともJ型と同じ可動指タイプの物が付属します。 ランドセルは、ワンパーツながら内部構造を再現。外装を被せ、キャノン砲ユニットを横から取り付けます。スモークディスチャージャーは2基一体で成形。旧1/100よりもランドセル前後の厚みが抑えてあるため、スモークディスチャージャーのカバーの配置が若干異なっています。マガジンの運用に支障は無いのかな?と少々不安(笑)。Jタイプのランドセルに換装してのテストも行われたという設定ですが、キットでも互換性が有ります。動力パイプのカーブが違うので、芯だけは自作してやらないといけませんが。 180mmキャノン砲は、スライド金型を使用した筒状パーツの組み合わせで構成。ヒンジパーツも砲身の内径を利用して組み込んであります。後端はスライド可能。マガジンの中には、ヒンジ部分から垂れ下がるように砲弾を仕込んであります。スキマから弾丸がチラリと見えると、キャンディー菓子のペッツを思い出して仕方ありません(笑)。 旧キットでは顔の横辺りがカバーで覆われているんですが、いつの間に変更になったんだろう?と思って当時のイラストを見返すと、元々カバーなんか付いていなかったんですね。折れ曲がったアームも同様に、模型情報1983年2月号の背面設定画では見当たらず。今回のキットでは砲の真下でダイレクトに上下可動する仕組みになっていますが、設定通りのデザインでキット化されたのは今回が初めての様ですね。
ビッグガンは、ランドセル下に追加可能な装備。後方に折り畳める設定ですが、今回は横に起き上がる可動軸を追加、背中に吊り下げる様な収納が可能となっています。もっとも右側は180mmキャノンに干渉して、中途半端な状態になってしまうんですけども。軸位置がもっと外側に配置してあれば、きれいに畳めたんじゃないでしょうか。アームとの接続部はボールジョイントで、ある程度上下にも動かせます。軸可動にすれば自由度は格段に上がったでしょうが、自重で垂れ下がるのを防ぐ意味でも、ボール可動が適していると思います。 銃身は可動式のグリップをハサミ込んでの左右貼り合わせ、銃口を含む先端部と後部ダクトは別パーツ化してあります。マガジンは着脱可能。中が空洞になるようワンパーツ成形してあり、中には弾丸が仕込んであります。弾丸は完成後も引き出し可能なので、内部再現を楽しむだけでなく、マガジンに弾丸を装填するシチュエーションも楽しめます。 ビッグガンの取付部分は、ランドセルの外装でなく、内側のメカパーツに直結する仕組みになっていて、保持力はしっかりしています。ビッグガンも180mmキャノンも、残弾が無くなったら切り離す事が可能。180mmキャノンはおそらくランドセルの右側部分をまるごと外すのだろうと思いますが、分離面にメカニック表現が無くて寂しいと感じるのはゼータクでしょうか? 武装は、ザクマシンガン、ザクバズーカ、ヒートホークが付属。腰後部のラッチやリア・サイドスカートのハードポイントも、J型と同様に配置してあり、マウントが可能です。これらが付属しなければランナーが1枚減って、少しでも価格を抑える事が出来たと思うんですが、活躍シーンのイマジネーションが広がった事になり、良かったと思います。同コンセプトであるガンキャノンも、手持ちのライフルを使っていますしね。 ただ、せっかくなら従来の使いまわしではなく、デザートザク用のザクマシンガンを付属させる等のサービスが有っても良かったんじゃないかと思います。フォースインパルスガンダムにソード装備を付けてしまう様な変化球を、ボクらユーザーも覚えてしまいましたし。従来型のマシンガンは、すでに何個も持ってますし。 組立時間は3時間10分でした。ボクの様に、主にプラモを通してMSVに親しんだ人にとっては、旧キットのディテールも捨てがたい物があり、元イラスト準拠のディテールを「変更」の様に感じる事もあると思います。前腕や足首等の色指定もオリーブドラブでなくなっていますが、これも元イラスト準拠に戻されたもの。当時のイメージに近付けたい人は旧キットの説明書等を参考に塗装すると良いでしょう。 今後の展開ですが、パイプカバーと同じランナーに含まれるモモが除外可能な配置となっています。ラビットタイプのグレーデン中尉機は、頭部周辺の写真と色指定が簡単に掲載してありますが、成形色を変更して、改めて発売する予定が有るのかも知れません。(塗装見本のグリーンは、元イラストより濃い様に感じます。参考まで。)Zガンダムにチラリと登場した青い機体も、モモとパイプの色が別々になっていて、こちらが予定されている可能性もアリ。別売のアクションベースにも対応してますから、宇宙戦シーンの再現も可能ですしね。
また、ザクキャノンのバリエーションでは有りませんが、スネや足首のフレーム芯を変更せずに、グフに近い機体を発売してみせた事で、同じフレームを使ってグフVer.2.0が開発可能な事を示した、あるいは確認したと言えるかも知れません。グフからさらに広がるバリエーションにも期待が高まりますし、胸フレーム中央部だけを新規パーツに変更可能な構造は、ザクシリーズのマイナー機を出すにも有利ですね。 ガンダムVer.2.0の拡張性の高さに驚いていた所に、ザクVer.2.0も負けていない事を再認識。ライバルキットとして今後も競り合って、とことん楽しませて欲しいものです。 おまけ |