健さんの
プラモコラム


その264
 HGUC ケンプファーの巻

HGUC 1/144
MS−18E ケンプファー/バンダイ
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場

2008年8月発売 初出税別価格1800円



 旧1/144、MGに続いて3度目のキット化となるHGUCケンプファーですが、緑がかっていた成形色が、キット化する度に青みが強く変化していますね。各キットの色がまるで違うもんですから、光学迷彩と言うか、保護色でも使えるんじゃないかと思ったりもする今日この頃です。なんとなく両生類っぽいし。もう少し時間を稼げれば、闇夜に溶け込んでアレックスも楽勝で仕留められたんじゃないかな?なんてね。では、各部を見ていきましょう。



 頭部は、オデコを別パーツ化。ヘルメット本体はアゴ横のダクトの成形にスライド金型を使い、ワンパーツ成形されています。モノアイシールドは頭部底面と一体で成形してあり、下からハメ込み。さすがに小さいのでモノアイの可動は有りません。目玉シールは正・副・予備(ややウソ)の3枚が付属。アンテナは出撃シーンで起き上がる描写が有りますが、今回も固定式となっています。



 ボディは、コクピット上の黒いラインと肩関節をハサミ込んでの上下貼り合わせ。ラインは両端のバーニアを成形するため、左右で分割。バーニアの内側は黄色いパーツをハメ込んで色分けしてあります。肩関節はニ軸可動。前に大きく、上にも少々引き出す事が可能です。

 ボディ上面の肩から胸へのラインは、MGではウネる様な変化を加えてありましたが、今回は設定に近いスッキリしたラインで造形。胸上面の角バーニアはMGよりも横に傾いた面上に配置される事になりました。バーニアのフチ取りは、無理に垂直に処理しようとした印象ですが、全周均等に角度を付ければ、より自然に見えたんじゃないかと思います。



 は、下が前後可動、上がボール可動の二重関節。胸の上面からセットし、エリ内側のメカパーツで押さえ込む構成なので、ボディの塗装後に組み付けられます。下側を少し引き出してやると、さらに上下可動の範囲が拡大しますよ。

 腹部動力パイプは、前と左右の留め具の間に1パーツずつつないで組み立てる方式。MGではウエスト正面と背中に固定してありましたが、今回は全て胸ユニット下面に固定してあります。

 ウエストは、前後貼り合わせの円筒形パーツ。腰から突き出たボールジョイントが直接胸に接続されていて、ウエストは被せてあるだけとなっています。あえてウエストの上下に関節を仕込まなかったのは、胸を反らせた時(つまり突撃ポーズ)の保持力を考えての事でしょうね。胸・パイプ・腰が密着したデザインのため、スイングは後ろ一方向だけで十分だと思いますし。



 は、フレームパーツを前後からハサミ込む構成。股関節を囲むリング部分は後ろ半分の厚みを削いであり、ポージングの自由度を高めてあります。フンドシ下にはポリキャップが仕込んであり、別売のアクションベースを接続可能。フタパーツは外装の段差部分に設けてあり、スカートが無く丸見えでも、そんなに気にならないと思います。

 腰後部には、ショットガン用のマウントラッチを装備。設定では上下からハサミ込む仕組みですが、キットでは着脱の容易さを優先して、コの字のパーツに上から差し込む方式に変更してあります。



 です。モモは左右貼り合わせ。スカートの代わりとも言えそうなモモカバーは、説明書ではモモを左右からハサミ込んで組み立てる指示になっていますが、実際は組んだ後でモモの上方から被せる後ハメが可能。縦のミゾだけで接続してあり、最初からそれを狙った設計になっています。側面のバーニアは固定式ですが、後部のバーニアはポリキャップで上下にスイング可能です。ビームサーベルは、もう少し突き出た造形でも良かったかも知れません。

 ヒザは、関節パーツを縦に成形、上下とも後ハメが可能な二重関節です。関節前側のふくらみは、成形方向の都合から側面だけ再現。パテで埋めてやるのも良いですが、せっかくですからシリンダー等のディテールを貼り付けてやるのも面白いかも知れません。



別売のアクションベースを使用しています。
このキットにアクションベースは付属していません。

 スネは、ヒザアーマーをハサミ込んで左右貼り合せ、前面のふくらみを取り付ける構成。ヒザアーマーは可動し、常に関節に密着させる事が出来ますが、曲げたヒザを伸ばそうとする時に引っかかる事があるので、その場合は引っ張り出してやりましょう。スネ側面等、下半身のバーニアは内側の黄色が色分けされていませんから、再現するには塗装が必要になってきます。

 足首関節は、上がポリキャップによる2軸可動、下がボールジョイントの二重関節。前後の可動範囲はMGと同等の様ですが、開脚時の接地性が向上。またシリンダーが仕込んでない分、ヒネリ可動が得意となっています。

 足首は、足の甲とクツ、足裏を縦に重ねる構成。ツメの可動は有りません。足裏のバーニアはMGより凝ったディテールになり、カカトの丸いスベリ止めは真円に近づいて良い感じです。クツ側面はMGに比べて丸みを抑えてあり、より引き締まった印象。どちらの形も捨てがたいですね。



 肩アーマーは前後貼り合せ。黄色いスラスターは板状につなげて一体成形され、内側にハサミ込んであります。左肩のスパイクは別パーツ化。肩側面にポリキャップで接続されているため、腕を横に上げると肩アーマーの位置が上がり、怒り肩になります。ハサミ込んだバーニアパーツやポリキャップを隠すため、下側のスキマが塞いであるのが残念ですね。接続方法の違いから、ポーズの自由度を落とさないために肩球体との密着度が犠牲になっているのも惜しいです。

 です。肩の球体は、ポリキャップをハサミ込んでの前後貼り合せ。ポリキャップカバーを被せて肩関節に接続します。上腕は筒状、と言うか、縦方向に山形に成形。球体との境い目でヒネリ可動します。上腕は外側だけ装甲で保護されたデザインですが、装甲パーツはミゾで噛み合わせて、縦方向に取り付ける仕組み。外れにくくなっています。



上はショットガン。グリップごとストックを交換する仕組みです。
中央はジャイアントバズ。グリップの可動とセンサー正面の併せて紹介。
下はビームサーベル。モモカバーのカーブに合わせて、端が斜めになっています。
左はシュツルムファウスト。弾頭が赤い物は、HGUCリックドムツヴァイの物で、本キットには付属しません。サイズは同等でも細部が異なっています。

 ヒジは、ABSの関節を上下とも後ハメ可能。MGでは前腕上部の丸モールド付近でも可動していましたが、こちらは今回は固定式となっています。

 前腕は、内側・甲・手首基部の3パーツ構成。はスライド金型を使って一体成形されています。今回のポリキャップは、HGUCνガンダムサザビーと同じPC−132を使用しているんですが、従来のPC−123と固定方法を変えてあるため、角度の付いた手首基部に仕込みやすくなっている気がしますね。対ブチメカ仕様のポリキャップと言えるかも知れません。HGUCの発売順序にも、少なからず影響を与えているかも。

 手首は、左右のゲンコツ、左右の武器持ち手、左の平手が付属します。登場シーンは短めですが、武器を使うシーンが多彩で、どれも印象深いためか、充実していますね。



旧1/144ケンプファー(右)との比較。さすがにHGUCのスタイルは洗練されていますが、旧キットの長いツノが、ちょっぴりうらやましい気もします。ピンチになると、このツノがV字に割れて・・・(割れません)

 背中のバーニアは、ボディパーツに固定。カバーは左右一体で、旧1/144やMGに比べて中央部分の造形が、あっさりした形に変更されています。旧1/144は背中と一体、MGは左・右・中央を全て単独パーツ化してありましたからね。一体化も細分化も難しい、程々のサイズと仕様のHGUCならではのアレンジと言えるかも。装甲の薄さやチラリズムを追及したい人は、重点的に手を加えると良いポイントかも知れません。

 武装です。ショットガンは、左右貼り合せの本体に別パーツの銃口を取り付け、後方からグリップを差し込む構成。ストックはグリップと一体成形され、グリップごと交換する事で有無を再現出来ます。グレーの武器は同一ランナーを2枚セットしてあるため、2丁それぞれストック有り/無しを自由に換装可能です。上面の照門は畳んだ状態で成形されているので、構えたポーズにこだわりたい人は、起こした状態で自作してやっても良いかも知れません。



 ショットガンは平手を添えての両手持ちが可能なので、地面スレスレを滑走する突撃シーンも再現出来ます。胸等のバーニアで浮上し、ストックが地面スレスレになる高度での滑走。腕の甲が丸みを帯びているのも、滑走時の都合を考慮したデザインの様に思えます。

 ビームサーベルは2本付属、グリップにクリアーのビーム刃を取り付ける構成です。モモから取り出すギミックは再現せず、モモ前後幅との整合性にもとらわれず、持ちやすい長さで造形してあります。



 シュツルムファウストは、弾頭部分が貼り合せになった2パーツ構成。ホルダーを介してヒザ横にマウント出来ます。ホルダーのラッチは無可動で、柄の部分を丸穴に通して使用しますが、開閉部のディテールは再現されています。



 ちなみにモデルになった実在兵器・パンツァーファウストは、安全装置が照準機を兼ねていて、構えて目で覗いて狙いを定める様です。弾頭に推進力は無く、筒内部の火薬で撃ち出された勢いだけで飛行。安定翼は筒内では丸めて収まっている、との事。劇中のシュツルムファウストはロケット弾の様に描かれていたり、ヒザにマウントしたまま撃って命中させたりしていて、パンツァーファウストと全く同じ仕組みという訳でもないのでしょう。MSの場合、ラッチの動きとメインカメラを連動させて狙いをつける事も出来るのだろうと想像しています。



 ジャイアントバズは、左右貼り合せの砲身に、センサーとグリップを取り付ける構成。比べてくれと言わんばかりのタイミングでリックドムツヴァイのグリーンカラーが同時発売されましたが、こちらに付属の同型バズーカよりも短くなっています。背負うために用意されたショートタイプが有った考える事も出来るかも知れませんが、キットでは砲身以外の部分の寸法も全然別物ですね。マガジン後部のX印を再現してあるのは感心しました。



歴代ジャイアントバズの比較。上からMGケンプファー、HGUCリックドムツヴァイ、HGUCケンプファー、1/144ケンプファー。
MGとリックドムツヴァイの長さが同じ事に驚きますが、グリップとマガジンの間隔にはスケール相応の違いが現れています。
HGUCケンプファーの物は、センサーを小さくして巨大感を出しているのかも?

 HGUCリックドムツヴァイでは別パーツ化されていた砲口部分が、今回は砲身と一体成形。代わりに奥行きが深くなり、リアリティは増しています。砲身側面の配線は細くなり質感が向上。途中で止まってますが、多分センサーユニットまで伸びているのが正しいんじゃないかと思います。HGUCリックドムツヴァイの物はその様な解釈です。センサーは、前後方向に成形した箱型の本体に後面を貼り付ける2パーツ構成となっています。グリップはヒンジがC字形で後ハメ可能。前に折りたたむ事が可能です。



 ジャイアントバズ用のマウントラッチは、開閉式のツメで保持する設定ですが、キットでは上からセットするUの字形の物に変更。バズーカ側の対応箇所には、位置決め用のミゾが彫ってあります。ラッチは背中のポリキャップに差し込んであり、前後に角度調節が可能です。



 チェーンマインは、リード線を機雷本体と裏面パーツでハサミ込む組み立て。リード線のハメ込みは組み立て後に位置調整出来る適度なキツさになっていて扱い易いですね。説明書には間隔参考例が原寸で印刷されていますが、好みで調節するよう指示されています。



 チェーンマインのグリップには突起が設けてあり、ゲンコツ内部の角穴に接続し、しっかり持たせる事が出来ます。振り上げたポーズでもグリップがグラつかず、嬉しい配慮ですね。



 組立時間は1時間40分でした。もともと歩く武器セットみたいなMSなので、それだけでも楽しいんですが、飾り台対応になった事で、印象的だった突撃シーンの再現も可能になり、これまでのキット以上に楽しい内容となっていますよ。

 ところで、アレックスの内蔵ガトリング砲で撃破されたためか、極限まで軽量化してあると解説をされる様になっていますね。そんなに軽量なのか、ちょっと他のMSと比べてみました。

ケンプファー 43.5トン(全備重量78.5トン)
リックドムU 45.6トン(全備重量79.9トン)
リックドム  43.8トン(全備重量78.6トン)
ゲルググJ  40.5トン(全備重量80.3トン)
ゲルググ   42.1トン(全備重量73.3トン)
ザクFZ   56.2トン(全備重量74.5トン)
ザクF    58.1トン(全備重量73.3トン)

 これをどう受け止めるかは難しい所ですが、リックドムゲルググと大差無いみたいですね。むしろ、ザクが意外と重たい事や、ゲルググ(A型)とJ型に大きな差がある事が分かり、そっちの方が面白いかも。

 ジオンのMSが普段から90mmマシンガンでジムと戦ってる訳ですから、個人的にはケンプファーだけ極端に装甲が薄いと解釈しなくても良い気もするんですが、もし本当に突撃ポーズ時の前面だけは強固な装甲を配置してあるなら、ごめんなさいボーズで戦うべきだったかも知れません。不意打ちも出来ますしね。(笑)


 おまけ


 あわせて旧1/144ケンプファーも紹介しておきましょう。頭部は左右貼り合わせ。モノアイはシリーズ共通の仕様で、クリアーピンクのパーツが使われています。



 ボディは前後貼り合せ。ウエストは無可動、動力パイプも一体化してありシャープさに影響が出ているのが残念ですが、背中のバーニア基部が球体になっていたり、エリ内側のパイプが上手く造形されていたりと、ワンパーツ成形の制約の中でも注目したい部分がチラホラ。フンドシ前部などは、HGUCにもこんな丸みが欲しかったなと思いますが、どうでしょうか。



 脚です。モモは左右貼り合わせ。モモカバーや後部のノズルまで一体で成形してあります。ヒザアーマーもモモと一体で無可動ですが、MGやHGUCよりも関節保護の点では優れている気もしますね。ヒザメカ前面に貼り付いているとも解釈出来、これもアリかも知れません。大きさも遠慮が無く、設定イメージに近い気がします。



 スネも左右貼り合わせ。割と自然な曲線が出ていると思いますが、ヒザ周辺だけは平面的で単調な造形ですね。可動のクリアランスを確実に取るためにこうなっているのだろうと思います。そういう意味でもヒザ関節は細い方が、プラモの設計上、有利なのかも知れませんね。ケンプファーはヒザ後部まで装甲に覆われたデザインですが、MGやHGUCの様にヒザ関節にメカ表現が入ると、モモより細くする事が出来ます。ヒザアーマーが小さいのも同じ理由なんでしょうね。

 足首は、クツと足裏を縦に重ねる構成で、足裏のディテールも再現。ポケ戦シリーズは塗装後に後ハメ可能な構成にこだわってありますが、このキットの足首は、スネに接続した後で足の甲を取り付ける事で解決してあります。



 肩アーマーは左右貼り合せ。側面バーニアを成形する都合ですね。奇抜な分割に見えますが、内側のハメ込みピンが目立ちにくく、肩関節軸に通す固定方式にして肩の球体から独立可動させるにも好都合だったりします。

 上腕は、肩の球体と一体で前後貼り合わせ。ヒネリ可動はヒジの上で行うので、上腕のアーマーはヒジの丸モールドと噛み合わない形で造形してあります。前腕は前後貼り合わせ。腕内側の丸穴は、成形の都合で中央の1つが省略されています。手首は左右とも穴開きゲンコツと武器持ち手が付属します。



 武装です。ショットガンは、ストック有り/無しとも左右貼り合わせ。HGUCよりも、かなり大きめに作られています。ラッチを使って腰後部へのマウントも可能。ジャイアントバズは、砲身左右とセンサーの3パーツ構成。砲身下の配線が左右に枝分かれしているのは何かの間違いと思われます。背負わせる時はC字形のラッチを使用。持たせる場合は、どちらの手首を使えば良いのか指定が有りませんが、全くガタ付きが無いので武器持ち手をオススメします。

、チェーンマインは、ポリ製のワイヤーパーツで機雷を接続。2個飛びの間隔で多少カーブさせられる仕組みになっています。裏面は肉抜きされていてポリワイヤーが丸見えですが、表側は良く出来ていると思います。武器一覧に含まれない場合や設定資料集に載せられない場合も少なくなく、付属しただけでも快挙なのかも知れません。



 シュツルムファウストはラッチと一体成形、ビームサーベルは付属せず。それでもここまで重武装のMSは珍しく、800円という価格帯も当時としては豪華な感覚だったと思います。説明書には本機の設定の他にMS−18の試作案も掲載。このシリーズの説明書は、資料としても充実しているので、機会があれば読んでみられると良いでしょう。

 1989年7月発売 初出税別価格800円

 2008.8.24 健 竹史


  

HGUC ザク2改
HGUC リックドム2 コロニーカラー
U.C.ハードグラフ 1/35 サイクロプス隊セット

  

HGUC ガンダムNT-1
HGUC ハイゴッグ
HGUC ズゴックE

  

MIA ケンプファー(PKGリニューアル版)
1/144 ケンプファー
MG ケンプファー

  

BB戦士 No.312 呂蒙ディジェ・甘寧ケンプファー 轟強襲水軍
けんぷファー(1) (MF文庫J)
M.S.ERA0099―機動戦士ガンダム戦場写真集

  

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 vol.1
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 vol.2
機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争(コミック)

  

98式AV 1号機 アルフォンス (1/48完成品)
BRAVE合金 イングラム1、2、3号機 リアクティブアーマー
BRAVE合金 07 イングラム1号機 & 3号機 (TV版)

  

1/72 VF-25F メサイア アルト機
ROBOT魂 ダブルオーガンダム
ROBOT魂 GNフラッグ

  

HG イナクト(デモカラー)
リアルSD ガンダムエクシア
1/20 ファッティー地上用(ペールゼン・ファイズ版)

  

電撃ホビーマガジン 2008年 10月号
ホビージャパン 2008年 10月号
モデルグラフィックス 2008年 10月号


[HOME]

inserted by FC2 system