健さんの
プラモコラム


その239
 MG高機動型ザク Ver.2.0の巻

(MG 1/100 黒い三連星ザク Ver.2.0/
 MS−06R−1A 高機動型ザク/バンダイ
 「機動戦士ガンダム」モビルスーツバリエーション)



 当初からバリエーション展開を想定して設計されていたザクVer.2.0が、ついにMSV展開に突入です。パッケージイラストを見れば、あの熱い時代をリアルタイムで体験した記憶が甦ってきますね。欲を言えば、J型・S型ザクよりも先に旧ザクと06RのVer.2.0を発売すべきだったのではないでしょうか。そして「Ver.2.0の旧ザクと06RとVer.1.0ノーマルザクを使えば2.0準拠のノーマルザクが作れるぞ!」という作例を模型誌で発表してですね・・・いや、すごい金額になるから止めましょうね。

 MSVウォーカーマシンでウハウハになってますが、落ち着きを取り戻して本題へと参りましょう。



 頭部は、J型・S型から変更無し。アンテナの有無が選択出来、アンテナの形状を2種から選べる点も変更ありません。アンテナは、隊長であるガイアの乗機を再現する場合に取り付けます。ついでに機体ナンバーを紹介しておきますと、ガイア機が03、マッシュ機が02、オルテガ機が06となっています。



 ボディは、成形色を再現する都合で、胸板とハッチのパーツが同形の新規パーツになりました。胸左右の外装は、J型やS型よりもエッジの効いた新規パーツに変更。06Rはこうでなくちゃいけません。ただし、エッジが効いた分だけ胸の張り出しが大きくなっているため、ハッチと外装のスキマが目立ってしまい、気密性が悪そうです。気になる人は、パテ等でスキマを埋めてやると良いでしょう。



別売のアクションベースを使用しています。
このキットにアクションベースは付属していません。

 腹部動力パイプは、パイプカバーの節の数がJ型・S型と異なります。これはランドセルがR型専用の大型タイプに変更されているためです。例によってランナー状態のまま、パイプの芯に1つずつカバーをズラして組み上げますが、使わないカバーは最初の1個です。カバーには直線部用とカーブ用が有り、芯のカーブに合わせて配列してあるため、最後の1個を余らせた場合は仕上がりが違って来ますから、注意しましょう。

 ところでこの腹部動力パイプ、J型・S型と同じランナーのK3・K6パーツなんですが、芯の後ろ側のカーブが変更されています。金型内のコマを入れ替える等の方法で、従来のランナーと共用させているんでしょうか。



 は、配色の違いを再現するため、フンドシ前部が同形の新規パーツになりました。ランドセルが大型化したため、バズーカラックは有ってもバズーカをマウント出来ないという問題がVer.1.0の時から有り、今回の説明書でもラックの使用法に触れていないんですが、今回はリアスカートを引き下ろすという裏ワザが使えます。Ver.1.0ではフンドシ後部にラックが付いていましたが、今回はリアスカートに付いているため、スカートを下げるとラック位置も下がるんですよね。これを狙った設計だったのかな?



 です。モモは、後部のふくらみが大きくなりました。ここは従来から燃料タンクと解釈されていた部分です。「機体性能の違いは内部メカの違い」という事で、内部フレームにも新規パーツが組み込まれています。可動関係のパーツはそのままで、それを取り囲むタンクだけ新規パーツに変更。この演出のために当初から多重構造のフレームを採用してあったんですね。



 ヒザ関節ヒザアーマーはJ型・S型と共通。フレームが共通なので、ヒザを曲げるとアーマーがせり出すギミックも引き継いでいます。スネ後部に張り出しが有るので、可動範囲は狭くなっています。宇宙でしか戦わないので、あまり問題ないのでしょうけども。

 スネは、フレームの芯はJ型・S型と共通ですが、その周囲にタンクを付けず、両横と後部にエンジンユニットを取り付け。今回は外装だけでなく、中身もR型です。外装も前後左右から取り付ける構成で、特にパーティングラインを消す必要の無いパーツ分割となっています。パーツ数はかなりの物ですが、3基のバーニアが外装から生えているのではなく、外装に開いた角穴の内部から生えているというのは、のぞき込んだ時の満足度が違いますね。



 3基のバーニアは共通のパーツですが、後部の物だけ可動式。バーニアとバーニアの間にあるフィンは、偏向板としては妙な(役に立たない)位置ですが、これは放熱板兼アーマーといった所でしょうか?Ver.1.0でも可動式でしたが、今回は保持力がかなり向上しています。プロペラントタンクは別パーツ化。スネ後部の細い動力パイプは、Ver.1.0では軟質素材を曲げて取り付ける様になっていましたが、今回は細いポリパーツに、ビーズの様な小さいパイプカバーを通して表現してあります。スキマが開きすぎて従来の方が良いかな?とも思うんですが、この「やり過ぎ感」こそセールスポイントと言っていいのかも。



 モモとスネをつなぐ動力パイプは、今回もコイルスプリングにパイプカバーを通す、芯の無いタイプ。長さはJ型・S型よりも若干短く、パイプカバーは左右各1つ不使用となります。



ボール可動を活かして、フロントスカートとフンドシの間にクサビ形のスキマを作ってやると、当時の06Rっぽくなりますよ。

 足首は、内部フレームはJ型・S型と共通ですがクツの外装が新規パーツになっています。(クツ上側)の盛り上がりが大きくなり、後部はスネの3基のバーニア周辺がエグれて変化のある形になっています。クツ底のパーツも新規パーツですが、従来パーツとの違いを見つけられませんでした。1ランナー内の色数の制約(黒が2箇所に分断されている)から別ランナーになった同形パーツでしょうか?



 は、ヒジに円錐形の張り出しが付いたタイプに変更になりました。Ver.1.0では前腕はパープル一色でしたが、今回は紺の部分のカラーリングも再現。肩ブロックは右が黒、アーマーに隠れる左はパープルですが、ここもカラーリング再限度が向上した部分。Ver.1.0では、どちらも紺でした。



 ランドセルは、メインバーニアが前後可動。接続自体はボール可動なんですが、軸位置が奥まっているのでほとんど前後にしか動きません。Ver.1.0では固定式だった偏向板は、今回は可動式になりました。もっとも設定に忠実なのは1.0の方で、傾いたヒンジの細かな表現を損ねない様にと、あえて無可動にしてあった部分でしょう。今回は偏向板の配置は近いものの、ヒンジのモールドは完全に省略し、真横に開閉する様にアレンジされています。



 ランドセルは内部も再現されていて、その上から各面に外装を取り付けていく構成。プロペラントタンクはVer.1.0よりも長くなり、両端がランドセル左右の張り出しまで入り込むほどのサイズになりました。ただし2パーツ貼り合せの内部メカにハサミ込んであり、簡単に交換出来そうに思えないのが残念です。ランドセル上面のフックだけでなく、上面の板までタンクと一体なのは何故なのか・・・新解釈?



ランドセルの内部メカを分解しないとタンクが取り出せないVer.2.0(左)と、外装とタンクが簡単に取り外せる代わりにタンクが小さく、表面付近の内部メカが再現されていないVer.1.0(右)の比較。
Ver.1.0については、センサー関連のメカニックは外装裏に固定されていると解釈する事も可能でしょう。

 また、外装を細かく分割してあるため、せっかく精密に再現してある中身を簡単には見れないのが残念ですね。タンクの交換のためにも、あまり手間をかけずに外装を取り外せると思うんですが。いっそVer.1.0とは解釈を変えて、フックはランドセルの運搬用として、タンクは横から差し込んで交換する様にすれば良かったかも。

 ランドセルは、パイロットシートを左右にスライドさせるレバーを露出させるため、まるごと着脱出来る様になっています。



 武装です。ヒートホーク、ザクマシンガン、ザクバズーカは、J型・S型と同等の物が付属します。

 ザクバズーカは前後のパーツを交換する事で、ジャイアントバズーカにも換装可能。今回も砲身を筒状に成形し、少ないパーツ数でまとめてあります。マガジンは本体を箱状に成形し、後ろからフタをする2パーツ構成。内部には5発を一体成形したロケット弾を入れてやります。完成後は閉じ込められるんですが、マガジンを外すと前側の穴から中を見る事が出来ます。せっかくだから、接続部分もそれらしく作ってあれば良かったかな?と思います。形状だけで回り止めになると思うので、ミゾを付けなくても済んだんじゃないかと思いますし。



シールドがアームで接続され、横に引き出せる構造になっているので、バズーカを肩に構える時に干渉を避ける事が出来ます。

 ジャイアントバズーカは、Ver.1.0では「ジャイアントバズ(プロトタイプ)と表記されていましたが、今回と同じ物と考えて良いでしょう。プロトタイプというのは「ドムとザクではゲンコツの大きさが違うが、同じバズーカを使っていたと解釈するべきか」という問題を、試作だった事にして別設計でキット化した、MG独自の解釈です。今回もその解釈を引き継いだ物と言えるでしょうね。



 フィギュアは、黒い三連星のメンバー3人が、立ちポーズ・座りポーズとも付属します。コクピットに誰を座らせるかも選べるので、これは嬉しい配慮ですね。立ちポーズはヘルメットを被っているのがMGの通常の仕様ですが、今回は素顔で造形されています。レーザー加工で、キャラクターの判別が出来るほど細かくモールドされています。MGギャンに付属するフィギュアを使えば、MGドムを背景にマ・クベの元に着任するシーンが再現出来ますね。(なぜか壷を持っているマ・クベ:笑)



 組立時間は3時間5分でした。3体並べるには少々高額なキットではありますが、スネ内部の組み応えや、カラーリング再現の徹底ぶり等は、実際に組んでみれば納得のいく内容だと思います。飾り台対応可動の充実で、バズーカを肩に担いで宇宙を駆けるシーンも再現可能。これからこのクオリティでMSVが増殖していくのかと思うと、今から楽しみです。


 おまけ


 Ver.1.0の06R黒い三連星機も、ごく簡単に紹介しておきましょう。シン・マツナガ専用06R−1、ジョニー・ライデン専用06R−2に続くMG高機動型ザクですが、ベースとなるMGザクがバリエーション展開を想定していないため、カラーリング再現のためにかなりのパーツを新規金型で用意してあります。ジョニー・ライデン機ではカラー再現に対応出来ず、パッケージの完成見本まで設定と異なるカラーで塗装されていた事を思えば、それなりに納得のいくレベルの再現度であり、しかもヒジの形状も再現、ジャイアントバズも付属。連続発売された旧ザク・ドムも買い揃えれば、黒い三連星のフィギュアが揃うという演出も有って、当時の印象は良かった様に思います。設定やVer.2.0と比べてみると、スネや足の甲、前腕等、塗装を必要とする箇所は少なくないですけどね。それでも設定本来のカラーリングで塗装した完成見本を掲載してあるのは、ジョニー・ライデン機での反省を踏まえた物と言えるでしょう。



 ちょっと脱線しますが、ジョニー・ライデン機はカラーリングの似たシャアのザクと誤認される事が有ったという設定になっていますから、初期はMGの配色の06Rに乗っていたというのも有りではないか?なんて思ったりもしますけどね。誤認されるのを嫌って再塗装したのが、設定に有る06Rである、とか。(こういうコジツケが認定されると、また話がややこしくなるんですけども。)



 本題に戻りましょう。スネは、F型等と同じ内部フレームをハサミ込んでの前後貼り合わせ。ヒザアーマーはF型等と同一のパーツです。スネ後部の細い動力パイプは軟質素材を曲げて取り付け。スネのバーニアの間にあるフィンは可動式ですが、保持力は今一つでしょうか。裏から押さえパーツで閉じ込めてありますが、Ver.2.0では内部フレーム自体を押さえパーツとして利用、さらにハサミ込み方向ではなく幅方向のキツさで保持力を持たせてあるのは、Ver.1.0での経験を活かした改良点だと思います。



 武装は、ザクマシンガン、ザクバズーカ、ヒートホークといったMGザクの基本装備の他に、新規設計の試作ジャイアントバズが付属します。しかも後部はマガジンが側面に付いた別設計の物と交換可能で、2通りに楽しめるサービスぶり。これはVer.2.0には無いプレイバリューです。



 ランドセルは、Ver.2.0が「まるごと取り外せる」のに対し、「簡単に外装を外せる」のが大きなポイントと言えるでしょう。Ver.2.0はパイロットシートを動かすレバー操作のために外す必要が有り、Ver.1.0は動力パイプのパイプカバーが抜けやすいため、ランドセルを気軽に外せないという事情の違いも有りますが、せっかく再現されている中身を簡単に見る事が出来、プロペラントタンクの着脱が出来るというのは楽しいですよね。



Ver.2.0(左)とVer.1.0(右)の比較。身長差の主な原因は足首の大きさの違いですね。

 足首はVer.2.0と同様、F型等に比べて上下幅を厚くしてありますが、元々のサイズが大きめのため、今見るとすごいボリューム。このボリューム感には捨てがたい魅力があると思います。胸板もハッチの開閉ギミックが無い代わりに立体的で表情豊かです。劇中イメージを優先してスッキリまとめてあるVer.2.0に対し、複雑なスネに釣り合う程良い分量のディテールが全身に配されているのも、MSVとしては妥当ではないかと思います。何でもかんでも新しいキットが良いという訳でもないですし、スケール物で各メーカーのキットを作り比べる様な気持ちで、今後も手にとって楽しんで欲しいキットだと思います。



 おまけ その2



 モデルグラフィックス2008年4月号で、実にタイムリーな「MSV特集」が組まれています。記憶を頼りに振り返る、当時を知る人に話を聞くという記事も面白いですが、今回は当時の出版物を、発表順に丁寧に再確認していくというスタイルで徹底研究。つまり当時ボクらが見聞きした物を手がかりに、見聞きした順に構成された記事であり、追体験・再確認するのにうってつけの臨場感が有ると思います。

 それが知ってる事の羅列に終わらず、見落としていた事、誤認していた事が結構有るんだな、と気付かされる所がまた面白いですね。手近な資料からよくぞここまで丁寧に・・・と、比較的ありふれた資料を元にしているだけに、かえって唸らされる部分が有りますし、元の資料をボクらが再確認する事だって可能なのです。

 秘蔵資料を紹介したページも有りますが、どういった経緯でMSVの設定や関連プラモが歴史を重ねていったのか記事で振り返った後で見ると、一層興味をかき立てられると思います。この号は一読して損なし、ガンプラ好きには保存版の一冊ではないかと思いますよ。

 2008.3.1 健 竹史


  

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1/48 OG戦フレーム エステバリス
1/48 陸戦フレーム エステバリス
1/48 砲戦フレーム エステバリス
1/48 空戦フレーム エステバリス
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