健さんの
プラモコラム

その189
 
ゲルググスーツバリエーションの巻

( 1/144 & MG 1/100 ゲルググ/
 MS−14 ゲルググ 「機動戦士ガンダム」に登場)



 HGUCゲルググが発売されたこの機会に、ゲルググの旧キットとMGを、簡単にではありますが、まとめて紹介してしまいましょう。おまけ記事で・・・と思ってたんですが、長くなったので独立した記事にまとめました。ゲルググ造形の変遷を振り返る、名づけてGSV(ゲルググスーツバリエーション)であります。



 1/144ゲルググ。前後幅よりも左右幅の方が広い頭部が何とも印象的。このキットの頭部で幅詰め工作を覚えた人も少なくないのでは?今改めて見ると、ヒザから下のボリューム不足の方が目に付きますね。それだけスリムで足長のプロポーションに慣らされたという事なのかも。足裏の面積は、HGUCの半分しか有りません。

 ヒジは、関節部にスキマの無いデザインを反映してボールジョイントを採用。ハサミ込み式で、あまり保持力は高くありませんが。肩アーマーがボディと一体で動かないため腕が上がらない構造なんですが、肩関節軸を肩の球体の上側から通し、可動用の切り欠きを極力見えない位置に配置しようとしている点は感心します。軸位置を工夫してあるのか、横方向には腕が良く上がります。



 武装はビームライフルとシールド、ビームナギナタが付属します。ライフルは右手と一体成形されているんですが、手首関節がボールジョイントでないため角度の調節が出来ず、ストック部分と腕が干渉し、持たせにくくなっています。

 シールドは、左手に持たせるだけでなく、背中に背負わせる事も可能。背中の穴に差し込む時はグリップを取り外し、少し角度の付いたジョイントピンに交換してやります。シールド裏の旧バンダイマーク(いわゆるバンザイマーク)は、最近の再販分でも刻印されているんでしょうかね?



 ビームナギナタは、使用状態の物の他に、背中に背負える未使用状態の物も付属します。手に持たせると穴開きゲンコツから外せなくなるので、組立時に「持たせる・持たせない」を選ぶ事になります。



 MSVシリーズ・1/144ジョニー・ライデン専用高機動型ゲルググ。1/144ゲルググキャノンに新規パーツを追加したキットです。写真ではバックパックを背負わせず、ノーマルのゲルググとして組んであります。当時からノーマルのゲルググとしても組める事はユーザーの間で重要視されていて、メーカーとしてもリファインの意味が有ったろうと思います。MGが換装キットになったのも、このキットの影響が有るのかも知れませんね。

 顔に上下幅が有るためクチバシが若干大きく、見る角度によっては垂れた様な印象。足首は大き過ぎる気がします。旧1/144キットの欠点を修正しようとするあまり、クチバシと足首を強調し過ぎたのかも。もっとも、その2点も欠点という程ではないでしょう。足首は大き過ぎると言うより、スソ内部にバーニアを配置したため、前寄りになって大きく見えているのかも知れません。



 関節の可動ギミックは非常に充実しています。肩アーマーが動く様になっただけでなく、前後・上下にスイング可能。その際にはジャバラの引き込み・引き出しを伴い、このキットの見せ場になっています。ヒジは関節を球体と解釈、30度程度しか曲がりませんが、ヒジを切り欠かない範囲で最大限の可動だろうと思います。



 武装は、ビームライフル、ビームナギナタ、シールド、バズーカ、ロケットランチャー(右腕オプション)、パックラーシールド(左腕オプション)の他、キット独自のロケット砲が付属します。もちろんB型またはC型のバックパックを背負わせる事も可能。プロポーション、ギミック、プレイバリューとも充実した、ガンプラ史に残る傑作キットだと思います。元キットであるゲルググキャノンは、後に1/144リゲルグにも流用されました。



 MGシャア専用ゲルググ。MGのパーツ分割に「実機のパネルラインの再現」という意味を持たせた画期的なキットです。これ以降、不要な接着ラインが激減してキット製作が容易になり、しかも作りながら実機の組立てを疑似体験する様な面白さが、さらに明確になりました。前後貼り合せでない肩アーマー、筒状に成形された上腕など、ワンパーツ化の試みも積極的に行われています。左右の手足も可能な限り共通化。モモはポリキャップを仕込む向きを変える事で左右の違いを実現、パーツ自体は共通となっています。



 スネは内側と外側のふくらみに若干違いを持たせて有りますがフレーム自体は左右共通。足首は完全に左右共通です。ハッキリと内と外に違いを持たせた方がゲルググらしいと思い込んでいましたが、実際手に取ってみると、この程度に抑えた表現の方が「ザクの後継機」らしいと感じました。

 スネ内部のパイピングにメッシュパイプを、肩のジャバラにラバーパーツを採用するなど凝った仕様になっている一方、モノアイの可動はMGザクの様に歯車を使わず、ツマミで直接動かす様に簡素化してあり、よりスムーズに動かせる様になりました。ウエストは直線的な分割を避け、しかもスカートに埋没させたデザイン上のこだわりが裏目に出て、左右スイングがほとんど出来なくなっているのが残念です。



 背中はパネルが取り外せる様になっていて、B・Cタイプに容易に換装出来る様になっています。説明書では「実機でも同様だった」と解説され、ザクに様々なバリエーションが生まれたという経験のフィードバックを受けた機体であるという説得力も生まれました。キットでは実機同様に換装を体験出来る様、B型のバックパックが付属しています。



 MGゲルググキャノン。このキットにもB型のバックパックが付属し、B・Cタイプを再現可能。B型で活躍したジョニー・ライデン機のカラーリングを(一部)再現してあります。完全に再現するには、上腕・モモ・足の甲などを塗装してやらなくてはなりませんが。この他、トーマス・クルツ少尉機の塗装見本が説明書に掲載されています。

 頭部はシャア専用機と同形の物(B型で使用)の他、クチバシが角ばって頭頂部にカメラが追加されたC型の物も付属します。1/144ゲルググキャノンに付属していたC型用のアンテナ(中隊長マーク)は、残念ながら付属しません。この頃のMGキットには、接着剤を使うグレードアップパーツ(好みで取り付ける細部ディテールアップパーツ)も付属していたので、接着式でもいいから付属させてくれたら嬉しかったですね。3連ランチャーとパックラーシールドも付属し、前腕の熱核ジェットユニットと完成後も交換可能。ビームライフルとシールドは付属していません。

 ビームナギナタを腰後部にマウントするホルダーが新たに付属しますが、C型装備だけでなく、B型装備の場合でも背中に従来のホルダーが取り付けられない訳ですから、S型・A型のキットにも腰用のホルダーを付けて欲しかったですね。S型・A型のキットにB型のバックパックを背負わせた場合、ビームナギナタは携行出来ないんですよ。腰と背中のポリキャップ径さえ統一してあればS型・A型に付属のホルダーを腰に取り付けられたんですが。S型の発売当初は、設計ミスではないかと思ったくらいです。



 シャア専用機から4ヶ月後に発売されたキットですが、共通部分のパーツにも手が加えられ、早くもグレードアップが図られています。スネ外装の内側にモールドを追加、肩アーマー内には内部メカ(天井部フレームと肩スラスターへのパイピング)を、新規パーツで再現。これ以降に生産されたシャア専用機も同様の仕様で発売されているハズ。初期出荷分のシャア専用機は、プラモ的にも「YMS−14」(Yは試作を示す記号)になったと言えそうです。

 余談ですが、ホワイトベースのクルーの何人かは旧日本軍の戦闘機の名前からネーミングしてある、なんて話を聞きます。ジョニー・ライデンは、雷電にちなんでネーミングされたんでしょうか?アニメには登場しないキャララクターですが、意外な所でホワイトベースと縁が有ったりして?!そうそう、クワトロ大尉なんかは、旧ホワイトベースクルーと共闘する「Z」の中では、四式っぽい偽名で百式に乗ってる訳ですね。



 MG量産型ゲルググ。MGザクでJ・F・S型の違いを(やや強引に)演出してみせた開発陣は、ゲルググでもS型と量産機との違いを、さらに明確に見せてくれました。頭部は新規パーツで、マリーネやイェーガーに通じるツブれた顔つきで造形。ダンバインの顔のイメージのバラつきを、トッド用とかトカマク用と言ってそれぞれ発売してくれた手法の元祖と言えるかも知れません。リアスカートは大きく垂れ下がり、外側中央にバーニアを増設しています。こちらはマリーネやイェーガーのイメージのフィードバックですね。

 当時はMGがこんなに壮大なシリーズになると考えられておらず、二度と無いキット化のチャンスと考えての事だったんでしょう。OVAのゲルググまではMG化されないだろうから、量産機がそれに近い物だった事にして発売してしまう。「解釈の提案」に「ファンサービスの精神」までプラスされてると言っていいでしょうね。

 (写真ではシールドにシャアのパーソナルマークが印刷されていますが、これはキットに入っていたパーツが間違っていたため。本来はジオンマークです。塗装したい場合はガンダムデカールも付属してますので問題ありませんでしたし、レア物はボクにとっては「当たり」なので、そのままにしています。:笑)



 バックパックはB型が付属。パネルを外して、好みで背負わせる事が出来ます。武装はビームライフルの代わりにビームマシンガンが付属。劇中ではイェーガーが使用した武器ですが、ここでも「又と無いチャンスを生かして、より多くのニーズに応えよう」という配慮が伺えますね。マリーネが使ったマシンガンはザクやドムから拝借出来ます。全種をキット化出来なくても、ゲルググファミリーの活躍イメージは提示してくれたと言っていいんじゃないでしょうか。



 S型とA型の頭部の比較。クチバシがシャープだったりとかいうラインの違いは分かりにくいかも知れませんが、耳の下端が斜めに張り出してるのは、ハッキリ分かると思います。



 MGアナベル・ガトー専用ゲルググ。基本的にはシャア専用ゲルググのカラーバリエーションで、ガトーの1/20フィギュアと試作型ビームライフルが新たに付属。価格はアップしていますが、従来のビームライフル、シールド、ナギナタ、B型バックパックも省略されず付属しています。



 頭部は、S型と同じデザインでアンテナの付かないタイプ。パーツ配列はS型と同じなのに、オデコにアンテナの取り付け穴が開いていません。こういうのは、どういう仕組みになってるんでしょうね?金型の顔パーツの部分だけ、コマを入れ替えて生産してるんでしょうか?



 試作型ビームライフルはMSの身長に近い長さのある大型の火器。これで値上がりするのはどうかな・・・?と思ってましたが、ほとんどライフルだけで新規ランナー1枚を使っています。MS本体が凝った構成でも、武器は単純な貼り合わせである事が多いですけど、このライフルは普段よりもパーツが多めで、満足度が高いと感じました。上下左右の放熱板がキッチリ分けられた冷却ユニット、その内部に再現された銃身本体(ハメ込みピンが付いてはいますが)、大型のスコープ、別パーツ化されたパイピング。良く考えたら、MS本体は擬人化されててフィギュアみたいな物ですから、手持ち武器こそ、よりメカらしく有って欲しいもの。ワンランク上の武器がセットされたこのキットは、メカ好きの人にはオススメじゃないでしょうかね。

 MGゲルググは、単品でも魅力的な意欲作だと思いますが、バリエーションキットを並べた時にいかに楽しんでもらえるか、しっかり計画された良い「シリーズ」になってると思います。発売されたばかりのHGUCも、これに負けないシリーズ展開を期待したいですね。

2006.11.3 健 竹史


 

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