健さんの プラモコラム
その174 HGUC ヅダの巻
( HGUC 1/144 ヅダ/
EMS−10 ヅダ 「MSイグルー」に登場)
MSイグルーから、ヅダがキット化であります。週刊ガンダムファクトファイルに登場した時から「ひょっとして、いずれ出るんじゃないかなー?」とは思っていましたが、ずいぶん早かったですね。HGUCはイメージが固まった過去のMSをキット化してきたシリーズですが、CGで描かれたヅダは外観の把握(って言うかデータ化)は十分と言えますし、ならばタイムリーに発売してもらえれば、ユーザーとしても嬉しいというものです。
頭部形状には機体ごとの違いがあります。これはアンテナ付の1番機。 |
ところで、設定画を初めて見た時には「リーオーみたいだなぁ」と思ったものですが、実際に劇中の活躍を見てみると、むしろトールギスのイメージですね。一旦封印されていたという経歴、爆発的な加速力、乗ると死ぬ機体、ついでにドーバーガンっぽい物まで持ってますよ。やっぱり狙ってやってるのかなー?では、キットに目を通していきましょう。
頭部はモノアイシールドにクリアーパーツを採用し、モノアイの可動を再現。同じツィマット社製のドムに続く快挙ですね。太い首が頭と一体になったデザインで、内部スペースが確保しやすかったのかも。頭のフタを外すとツマミが露出し、これでモノアイを左右に動かします。小さいので、ラジオペンチ等を使って動かすと良いでしょう。頭蓋と鼻のパーツは選択式で、アンテナ付きの1番機、アンテナ無しの予備機、モノアイシールドが上に切れ込んでいない2・3番機を再現する事が出来ます。
ちなみに、「EMS」ではない、「MS−04」「MS−10」という機体は別に存在します。
MS−04・・・プロトタイプザク
MS−10・・・ペズンドワッジ |
ボディは、前後貼り合わせ+胸板という構成。エリの内側は特に作り込んでありませんが、首が太いので問題無し。ウエストは、少し横長の円柱形で、良く回ります。少し引き出してやれば、ほぼ真後ろまでヒネる事が可能。この首やウエストには、ターンエーのデザインがフィードバックされているのかも?なんて思うんですが、どうでしょう。
腰です。フロントスカートは左右一体で可動。サイドスカートは3枚一体で可動します。この細かく分かれたスカートが、実機では個別に動くのかそれとも連結して一体化してあるのか分かりませんが、1枚1枚のスカートにナンバーが刻印してあるので、少なくとも組立前には別パーツになっているのだろうと思います。塗装前でもナンバーの判別が付くので、実機でも刻印となっているんじゃないでしょうか。
リアスカートは固定式。腰後部にはフックの様な物(武装マウント用?)が有りますが、単独パーツ化してクッキリ再現してあります。サイドスカートにはハードポイントが有り、マシンガンの予備マガジンをマウント可能。フンドシは放熱目的なのか、エンジン表面に見られる様なの凹凸が、前から後ろまで続いています。(スラスターベーンじゃないよね?!)フンドシ下面の一部は飾り台取付け穴のフタになっていますが、言われなければ気付かないくらいに、モールドを損なわず周囲にマッチしています。
この頭部は2・3番機です。眉間に縦の切れ込みが無いのが特徴。 |
脚です。ヒザ関節は先に可動部を作っておいてから、モモとスネでハサミ込む構成。可動部のハメ込みピンを切り落とせば、モモとスネをそれぞれ組んでから後ハメ出来そうです。モモは前後分割になっているのが面白いですね。MGでは良く見かける分割ですが、HGに使ってあると何だか新鮮です。
スネは側面にハードポイントを配置。ただの丸穴なんですが、周囲どころか奥にもディテールが施されています。これはサイドスカートのハードポイントも同様です。手が込んでますね。フクラハギのバーニアは、普段より細かく作りこんであります。MGジオング等にも負けていないかも?!
これは予備機。頭蓋は1番機と共用で、鼻パーツの違いで再現してあります。 |
足首は、足の甲・クツ・足裏を重ね、さらに後ろからカカトをハメ込みます。厚くて寸詰まりな感じのクツが、アフターココニー暦のMSみたいで面白いですね。(山を掘ったら出てきたんじゃないかと:笑)足首関節はHGUCザクの様に引き出す事が可能で、開脚時の接地性も良好。スネアーマーのスソがオープンなデザイン(ツィマット社MSの特徴?)ですが、ハメ込みピンを上手く隠してあり、しかも隠すための板にディテールを加えて構造物に見せかけてあります。
ランドセルは、芯になるパーツに左右から外装を被せてあります。メインスラスターはグリグリ可動。加速性能が売り物のMSですから、ここが動くと楽しさが増しますよね。ボールジョイント用のポリキャップを使ってありますが、ほとんどは軸可動+ヒネリの要素で動いています。それにしても、土星エンジンという名前にドキドキするのはボクだけではないでしょう。あのー、サターンロケットって呼んでもいいッスか(笑)?
シュツルムファウストをHGUC旧ザクから拝借して、2本取り付けてみたところ。 |
ランドセルの4隅には姿勢制御用バーニアが付いていますが、この内側モールドの細かさもスゴイです。直径4ミリの小さなバーニアですが、同心円状の段差、中央に噴射口、縦に無数の細かいスジまで表現されています。
腕です。肩関節軸の動きは、このキット最大の注目ポイントでしょうね。軸が前に引き出せるだけでなく、腕側にも前後スイングのギミックが仕込んであります。従来の引き出し関節だと、肩ブロックは必ず関節軸と同じ向きに傾いていましたが、今回は向きを変えずに位置だけ前にズレた様な表現も可能となっています。上腕に腕伸縮のギミックを仕込むために特殊な関節を考えた結果かも知れませんが、この可動は面白いですよ。
肩関節をスイングせずに上腕をヒネる事も可能です。右上腕と左上腕の角度の違いに注目。 |
肩の上に突き出しているシャフトは、上腕を貫通してヒジまでつながっています。これはスネにマウントした武器を取るための伸縮機構で、スコープドッグのアームパンチが上腕に仕込んである様な物ですね。前腕でなく上腕に内蔵した事で、肩上までピンが突き抜けた処理が可能となり、確実単純なギミックにまとまっています。スライド部分はABS製、上腕内部には軸受けパーツも仕込んであり、保持力は十分です。伸縮部のロッド3本は密着した形で造形してありますが、設定では離して配置してあります。固定ポーズで再現する人は、手を加えてやっても良いでしょう。
前腕は左右貼り合わせ式で、ヒジ横のブロックは別パーツ化してあります。ここも腕の甲アーマーのフチをスジ彫りが一周していたりと、細工が細かいですね。ヒジはHGUC旧ザクの様な二重関節ではなく、従来通りのポリキャップカバー付の関節。設定ではヒジ内側に切り欠きは無い様ですが、そこは可動のための止むを得ないアレンジという事で。ただし、ポリキャップカバーは引き込み式の装甲にも見える様な凝ったデザインで、この解釈も面白いと思います。
手首は、左右の穴開きゲンコツと、武器持ち用の右手が付属します。手首の造形は最近のスタンダードになっているリアルな物ですが、ハメ込み強度は十分です。
武装です。ザクマシンガンは、HGUCザクの物と形状を統一してありますが、フォアグリップのスベリ止めパターンやマガジン上部のモールドといった細部が異なっています。生産拠点やロットによる違いの表現でしょうか。右側面にはピンが付いており、マガジンを外せばスネにマウントする事が出来ます。右足にマウントしやすい様、ピンは左側に付いてる方が良かったかも知れません。ウエストが良く回るから、手は届きますけどね。予備のマガジンが1個付属、腰にマウントする事が可能です。
左足のマシンガンを右手で取ろうとしているところ。良く動くウエストです。 |
取付ピンの先端にはディテールが施してあり、見苦しくない様に配慮してあります。ヒートホークホルダーの取付ピンにも、ハードポイントの穴の奥にも同じモールドが施してあるので、統一感も有りますね。気になるのは「ザクマシンガン」という名称。ヅダの方が採用されていれば、「ヅダマシンガン」と呼ばれたでしょうに・・・。その後もハイヅッダとかヅダファントムとかが登場するハズでしたが、それもこれも、ジオニックの連中が悪いのです。
シールドは、白兵戦用ピックの展開が可能。裏面のグリップも展開し、握らせる事が出来ます。肩へのジョイントはポリキャップで2軸可動。それとは別に、上腕の取付ピンが移動し、普段は後ろにあるシールドを、側面や前面に回りこむ様に動かす事が可能です。取付ピンは、腕の伸縮用シャフトを軸にして回転する仕組みになっています。
シュツルムファウストは1本付属。HGUC旧ザクの物と同じ形状ですが、シールド裏に装備する時に位置が合わせやすい様に、ミゾが彫ってあります。キット2体分のパーツを使ってシュツルムファウストを2本装備させたい場合、このミゾのおかげでジョイントの接続位置が決まり、2本の配置を揃える事が出来るんですね。
頭部のパーツ構成と、各キットのシュツルムファウストの比較。
上からドムトローペンサンドブラウン、旧ザク、ヅダの物です。 |
ちなみに、HGUCヅダとHGUC旧ザクのシュツルムファウストは、HGUC ドムトローペンサンドブラウン付属の物よりも、柄の部分が4ミリ程度長くなっています。これは旧ザクのスパイクシールドの長さに合わせたためでしょうね。弾頭部分のサイズは統一してあるので、不揃いに感じる事は少ないと思います。
ヒートホークは、旧ザクやザク2と同等の物が付属。ヒートホークホルダーは、動力パイプの部分ではなく、グリップの部分を保持する方式となっています。ザクとヅダのホルダーを同時に使えば、ヅダの足とザクの腰を連結する事も可能です・・・。何の役にも立ちませんけどね。スネに装備すると手の位置から遠くなるため、ヒートホークの向きは上下逆に装備する様になっています。
制式採用機を決める模擬戦が行われたあの日・・・。ジオニック社の連中は、あの時も汚い手を使ってきた。ヅダが右足に装備していたヒートホークを腰のホルダーで引っ掛けて奪い取り、そして・・・
これは筆者が寝ぼけて見た夢であり、サンライズの公式設定ではありません(笑)。 |
135mm対艦ライフルは、スライド金型を使って砲口を2パーツで再現。バイポッド、フォアグリップ、上面のグリップが可動します。マガジンは着脱式で、側面には予備のマガジンも付いています。こちらはライフル上部に装着する事は出来ませんが、給弾口がモールドされた、再現性の高い物になっています。
デザインのモチーフは対戦車ライフルだろうと思いますが、どう見てもトールギスのドーバーガンを連想してしまいます。バイポッド(二脚架)が付いていますから、地面のある場所で使う事も想定されていたんじゃないでしょうか?地上やコロニー内部をイメージして、ザクに持たせても良いかも知れません。
飾り台は付属しませんが、HGUCガブスレイ等の飾り台を流用する事が可能です。ジョイント部分の角度を変えられる飾り台は、機動性を売り物にしているヅダに最適ですが、この飾り台、付属してるキットが少なすぎませんか?もう少し頻繁に付けて欲しいと思います。
モノアイと武器のスコープには、色分け用のシールをセット。マーキングシールは78種類も付属し、全身の注意書きや機体ナンバーを再現出来ます。この密度はMGに近いですね。
ところで説明書の迷彩パターンの資料(CG)によると、予備機のナンバーがY(6)になっていますね。別の資料では、正面にはW(4)のナンバーが記され、キット付属のシールでは、正面・シールドともW(4)に揃えてあります。紛らわしい字なので間違ったのか、それとも何かエピソードが有るのか・・・。予備機にシールドを譲る事になった「幻の6号機」を妄想してみるのも楽しいと思います。
組立時間は1時間10分でした。良く動き、武器も豊富で、何より細密な彫刻が楽しいキットです。迷彩のある機体なので塗装しないと劇中と同じ仕上がりにならないんですが、予備機だけは迷彩塗装が施されていません。無塗装でも楽しめる機体を登場させたのは、キット化された場合を考えての配慮なのかも知れませんね。塗り分けパターンは直線的ですから、初めて迷彩にチャレンジする人にとっても、手頃な素材かも知れませんよ。
おまけ
第一次ガンプラブームの頃のメーカー裏話を紹介した「ガンプラ開発真話」を読んでみました。これ、面白いですよ。あの時期のエピソードを耳にする事は時々ありますけれど、宇宙戦艦ヤマト以前から、と言うより(株)バンダイ模型設立時からの苦難が順を追って紹介されてますから、ガンプラに取り組むと決めた時の意気込みや期待がどれ程の物だったか、すごく良く伝わってきます。
そして、設計・開発陣の苦労だけでなく、生産ラインを動かしている人たちや営業担当、さらには取引企業の苦労まで紹介されていて、ガンプラが「多くの人の手によって世に送り出されている」物である事が実感出来ます。今後ガンプラを手にする度に、今まで以上に感動出来るかも。
ふと思い出すのは、何年も前にTVで見たワイドショーの1コーナーです。明らかに誘導的なVTRを見せて、最後にはスタジオのお母さん方の多くが「やっぱりハイテクおもちゃよりも、積み木みたいな手作りの味わいのあるおもちゃで遊ばせたいです」って感想に至るという、そんな構成でした。
ボクも積み木は最高の知育玩具だと思ってますし、コマや竹とんぼも欠かせないと思ってますが、最先端の工場で量産されるおもちゃも、機械が勝手に作ってる訳じゃないんですよね。試作やラインの管理にどれだけの手間がかかっているか、日々どれだけ改良の努力が重ねられているか、分からない人には伝わりにくいだけなんですよね。・・・と、「人生で一番感動した事はゾイドの歯車とメカニックガンダムのパーツ裏」というボクなんかは、思う訳であります。
ちょっと話が脱線しましたが、社史がエンターテイメント読み物として成立しちゃう会社ってのは、やっぱりスゴイな、と思います。そして、表紙は1/144ガンダムの金型の写真なんですが・・・へぇ〜、金型って、こんな風になってたんですね。もしかして色の違う部分がベリリウム合金ですか?とまぁ、表紙を眺めるだけでも楽しい本なのです。オススメです。
2006.6.29 健 竹史
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